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福島発! SF青春映画『ひかりのまち』—— 震災を乗り越え、地域とつながる新しい映画のかたち

安藤親広プロデューサー・松本千晶監督スペシャルインタビュー

“プリミティブで、ちょっと可愛らしくて、でも温かい”。そんな言葉がぴったりの、福島市飯野町にある「UFOふれあい館」をきっかけに、ひとつの映画が生まれようとしています。

タイトルは『ひかりのまち』——。その優しい響きには、震災や原発事故だけでは語り尽くせない「福島の今」と、福島市で前を向いて生きる人々の姿が込められています。

SF青春映画というこれまでにないアプローチ

SF青春映画というこれまでにないアプローチで、全国へ、そして世界へと“福島発エンタメ”を届けようという試みが始動。2026年の全国公開を目指して進行中の本作『ひかりのまち』のオーディションのため、制作陣が福島市を訪れました。

本作のプロデュースを手がけるのは、『海猿』『ALWAYS 三丁目の夕日』『ちはやふる』などで知られる安藤親広氏。そしてメガホンを取るのは、『死刑にいたる病』『孤狼の血』などに助監督として携わってきた松本千晶監督。

福島で映画を撮るという選択に、どんな思いが込められているのか、その胸の内を伺いました。

UFOふれあい館が繋いだ、福島と映画の縁

安藤親広プロデューサーと福島市観光PRキャラクター「ももりん」

——福島市との縁ができたのは、いつ頃のことだったのでしょうか?

安藤プロデューサー(以下、安藤):今から4年ほど前、都内で開催されたロケツーリズムのイベントに参加したのがきっかけでした。そこで福島市とご縁が生まれたんです。ちょうどコロナ禍が始まった頃で、すぐに映画制作へと動き出したわけではありませんが、福島で何かできないか、という思いが少しずつ芽生えはじめました。

——最初から「SF青春映画」を構想していたわけではないのですね。

安藤:はい、当初は何も決まっていませんでした。ゼロからのスタートです。転機になったのは、僕の知人が福島の方々と交流する中で聞いた話でした。

「福島からエンタメ作品を発信しようとすると、どうしても“原発”とか“震災”といった暗いイメージと結びついてしまう。けれど、地元の人たちは前向きに生きているし、その姿が作品にはなかなか反映されていない」……そういう違和感を、彼が感じていたんです。

——その話が、作品づくりのきっかけに?

安藤:そうですね。ただ、実はその話の前に、僕自身が福島市からのプレゼンを受けていて、その中で「UFOふれあい館」の存在を知ったんです。妙に惹かれましたね。すごくプリミティブで、ちょっと可愛らしくて(笑)。

彼に「UFOふれあい館って知ってる?」と聞かれたときも、「ああ、あのふざけた施設か」と冗談交じりに返したくらいです。でも実際に訪れてみたら、UFOが出るという千貫森の都市伝説も含めて、SFの題材としてものすごく面白いと感じました。

——そうした偶然がいくつも重なって、今の作品の原型ができあがっていったわけですね。

安藤:ええ。福島市の土地柄や人の温かさ、そして“ちょっとふざけてるけど真剣”な空気感が、この映画の根っこになっています。

——UFOということは特撮の要素も関わってくるのでしょうか?

安藤: 現在は福島市をメインの撮影地としていますが、今後の展開次第では福島県内の他地域も視野に入れています。実は三部作構想もあって、将来的には会津や浜通りを舞台にしたエピソードも構想中です。
いずれも、福島ならではの魅力と空気感を生かしたSF青春ものとして展開していきたいですね。

福島市で開催された特別なオーディション

安藤親広プロデューサー

——今回のオーディションについてはいかがですか。

安藤:福島の方々がどれくらいエンターテインメントに積極的か、自己表現が得意か、それを確かめる意味でも今回は非常に重要なオーディションです。「引っ込み思案なところがある県民性」と聞いていたので不安もありましたが、多くの応募者の中から50名ほどの方に直接お会いすることにしました。

今回出会えるかどうかはわかりませんが、主役級は今後東京でもオーディションを行います。ただ、サブキャラクターやセリフのあるエキストラには、福島の方にもどんどん参加していただけたら嬉しいです。

——これまでの作品制作でも同じようなアプローチをされてきたのでしょうか。

安藤:今回が初めてですね。通常であればキャスティングディレクターに依頼し、オーディションも東京で完結します。でも今回は、福島というロケーションだけでなく、できる限り福島の人々にも関わってもらいたい。福島発のエンタメを全国、さらには世界に発信できるモデルケースにしたいと思っています。

スタッフもオール福島でと言いたいところですが、志の高い若者は多くが東京に出てしまいますし、福島だけで完結するのはまだ難しいと思います。ただ、関われる部分ではできる限り地元の方と一緒にやっていきたいですね。

——監督にとって長編映画は初挑戦とのことですが、今のお気持ちは?

松本監督(以下、松本):はい、長編は初めてなので不安もありますが、地元の方々と一緒に映画を作るというプロセスに、とてもやりがいを感じています。映る人も映らない人も、この映画制作がひとつの「思い出」になってくれたら嬉しいですね。映画を通じて「一緒に作った」という気持ちを共有できたらと思います。

松本千晶監督

——飯野町に初めて足を運んだときの印象は?

安藤:プレゼンで聞いていた通りでした。市長には「プリミティブで可愛い」と伝えましたが、率直に言えば“ちょっと貧乏くさい”印象もありました(笑)。

平成初期に全国で進められた町おこし事業の一環で建てられた施設だと聞きますが、その中では比較的まともなほうだと思います。内装は少しチープですけど、逆にそれが良さになっています。「プリミティブなUFO」というワードが、本作のキーになるかもしれません。

松本:むしろそのチープさが、コメディの背景としては魅力的なんです。温かみがあって、映像的にも楽しみです。

UFOの里

福島市飯野町にある「UFOふれあい館」

福島から、笑って元気になれる作品を届けたい

——福島から全国、そして世界に発信というお話もありましたね。

安藤:はい。今、日本映画が世界から再注目されています。山崎貴監督の『ゴジラ-1.0』がアカデミー賞を獲ったり、俳優の真田広之さんがプロデューサーと主演を務めた『SHOGUN』が話題になったり。そうした中で、「福島」も世界の人が知っている地名です。

ネガティブな文脈で知られていることも多いですが、逆にその“知名度”を利用して、可愛らしくて少しふざけたSF青春映画を送り出せば、面白がってくれる人もきっといるはずだと考えています。

——映画のタイトルをあえてひらがなで『ひかりのまち』にした理由は?

松本:「まち」という言葉も、「街」や「町」と表記することで規模や人口密度のイメージが固定されてしまいます。それを避けたかった。「ひかり」についても、物理的な光だけでなく、心の中の希望など、いろんな意味を含ませたいと思いました。

安藤:まだ仮タイトルですが、漢字やカタカナにすると意味が限定されてしまうのが嫌だったんです。タイトルの解釈も、観る人によってさまざまでいい。そんな想いで名付けました。

——安藤さんにとっての「ひかり」とは、どんな意味ですか?

安藤:やっぱり、人の想いとか、前向きな生き方ですね。明るく、元気に。「福島からこんなくだらない映画が出てきた!」って、笑ってもらえるような作品にしたいんです。笑って「福島って、ええやん」って思ってもらえたら最高ですね。

——福島の人々へメッセージをお願いします。

松本:「ここで撮ってもらってよかった」と思ってもらえるような作品を目指します。福島を体現するような映画にしたいです。

安藤:この映画は、福島の人たちと一緒に作る作品です。「『ひかりのまち』って、私たちが作った映画なんだよ」と、胸を張って言ってもらえるような、そんな映画にしたいと思っています。

地域とつながる、新しい映画のかたち

スクリーンに映るのは、UFOも青春も、そしてちょっと不器用だけどまっすぐな“福島の今”。『ひかりのまち』は、観客に驚きと笑いと、ほんの少しの涙を届けてくれるでしょう。

そして何より「映画って、こんなふうに地域とつながれるんだ」と思わせてくれる作品になるはず。この“ひかり”が、福島からどんな未来を照らしていくのか……公開がますます楽しみです。

※インタビューは福島オーディション前に行いました。現在は、福島・東京オーディションは終了しています。

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