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福島市唯一の酒蔵が「オール福島市」で醸したお酒で金賞受賞! 金水晶酒造インタビュー

「福島市だからこそできるお酒」を通じて、福島市のまちづくりや価値向上を目指す

毎年5月に行われる、日本酒ファン注目の一大イベントが「全国新酒鑑評会」。これまで福島県は、9連覇を含み合計12回も日本一を獲得してきた、名実ともに「酒どころ」です。
2026年5月に発表された、令和7酒造年度 全国新酒鑑評会において、福島県は全国最多の20銘柄で金賞を獲得。2年連続、13回目の日本一に輝きました。

そして金賞銘柄の中には、福島市内で唯一の蔵元として知られる「金水晶酒造」の名前もありました!

金水晶酒造は、2022年の福島県沖地震で松川町にあった蔵が全壊。2024年に荒井へ蔵を移転するという大きな転機を乗り越え、さらには創業以来初となる、すべて福島市産の原料で醸した「オール福島市」の純米大吟醸で、栄えある金賞を受賞しました。

「ふくしまを、醸す」を掲げる斎藤湧生社長と、日々酒造りに真摯に向き合う杜氏の菅野和也専務のお二人に、金水晶の酒造りと福島市への思いについて伺いました。

北・中・南の要素が結集! 119年の歴史で初の「オール福島市」金賞酒

金水晶酒造の斎藤湧生社長(右)と、杜氏の菅野和也専務(左)

金水晶酒造の斎藤湧生社長(右)と、杜氏の菅野和也専務(左)

――全国新酒鑑評会での金賞受賞、本当におめでとうございます! まずは受賞酒について教えていただけますか

斎藤社長:ありがとうございます。今回受賞した酒は純米大吟醸なのですが、大きな特徴として、福島市119年の歴史において初めて、「福島市の米と水」だけで受賞した酒となります。

酒米は、福島県で開発されたオリジナル酒米「福乃香(ふくのか)」を100%用いました。これまで福乃香は掛け米などに使うことはありましたが、最初から最後まですべて福乃香だけで醸した酒で金賞を獲るというのは、この米が開発されてから初めてのことなんです。

金賞の受賞はもちろんですが、福島市だからできる酒造りで、福島市らしい特徴を出した上で全国に通用するということを、初めて弊社が証明できたというのが一番嬉しいところです。福島市史上初、福乃香史上初というのは、大変な名誉です。

 

――どのような味わいを目指したのでしょうか

斎藤社長:「福乃香」は非常に柔らかく溶けやすい米なので、出来上がるお酒の飲み口はやわらかくなります。しかし、金賞を取るためには後味が淡麗でないと絶対に届きません。そこで今回鍵になったのが、今の蔵(四季の蔵)で使っている「吾妻山の伏流水」です。

この水は磐梯朝日国立公園の火山灰の地層を通ってきた水で、水質日本一である荒川の伏流水でもあります。全国的にも珍しい、中軟水の中でも硬めの水なんですよ。
この硬い水を使うことで、飲み口はやわらかいのに後味はすっきり、そして香りは華やかになります。米の特性と、今の環境の水という条件がうまく合致した結果ですね。

金のような華やかな香りと、水晶のような澄み渡る後味。この2つを表現してこそ「金水晶」だと言えると考えていましたので、今回やっとそんな味わいに近づけたかなと思っています。

――吾妻山の伏流水が、味わいの決め手になったのですね

斎藤社長:実は仕込み水については裏話があるんです。ここの荒川の伏流水だけではなく、後味を丸くするために、福島市北部に位置する飯坂町茂庭の超軟水を少しブレンドしています。

つまり、福島の北部(茂庭の水)、中部(吾妻山の伏流水)、そして南部(松川町で栽培された酒米)という、福島市を北から南まで満遍なく合わせて造った「オール福島市」で取った金賞なんです。

蔵の移転と小さなタンクがもたらしたチャレンジ

――松川町から、ここ荒井へと移転し、水が変わるというのは大きな挑戦だったのではないでしょうか

斎藤社長:仕込み水についてはさらに伏線があって、蔵が松川にあった頃から、一部のお酒にはこちらの荒川の伏流水を分けてもらって仕込みに使っていたんです。そのときに、すごくクリアな味になることがわかっていました。

仕込み水だけでこんなに味が変わるなら、全部この水に変えたら唯一無二のクオリティになるのではないか。その仮説が今回、ピタリとはまったというわけです。

蔵内部の様子。中に入ると日本酒のいい香りが漂ってきて、思わず深呼吸。

蔵内部の様子。中に入ると日本酒のいい香りが漂ってきて、思わず深呼吸。

――蔵の移転に合わせて、仕込みタンクのサイズを小さくされたそうですね

斎藤社長:それが金賞受賞の大きな理由の一つだと思います。昔のように冬の大きなタンクで失敗したら取り返しがつきませんが、小さなタンクを導入したことで新たな挑戦がしやすくなりましたし、もろみの管理が楽になりました。

さらに温度管理ができる環境を整えたことで、理論上は年間を通して複数回——厳密には3期醸造ができるようになりました。1年に1回のチャンスなのか、3回チャンスがあるのかと考えると、3回試せるのはすごいことなんです。
このように複数回試行錯誤ができるからこそ、この味にたどり着けたんです。

今年の造りでも、ここをちょっと変えてみようとか、すでに杜氏からいろいろ意見が出てきています。品質の向上に終わりはありませんので、彼と議論しながら進めています。

福島市の米と水だけで挑む、ど真ん中直球勝負

杜氏の菅野専務

――杜氏の菅野さんに伺います。移転で水が変わってから2期目のチャレンジで金賞受賞の快挙ですが、今回のお酒造りでどのようなことを意識されましたか?

菅野専務:鑑評会で受賞するにはストライクゾーンがあると思うのですが、これまでにいろいろ経験してきて、ある程度インパクトがないといけないと感じていました。ですから、ぼんやりした酒ではなく、はっきりとしたインパクトのある味わいの酒を造ろうと考えていました。

――「福乃香」だけを酒米として使うのは県内でも初めての試みで、扱いが難しい米だと先ほど伺いましたが、具体的にどのような苦労がありましたか?

菅野専務: 福乃香は非常に柔らかくて、水をよく吸う米なんです。他の酒米に比べて中心の「心白(しんぱく)」が大きいので、40%まで磨くような高精白にすると扱いが難しくなるという特徴があります。(※)

※ 編集部注:鑑評会出品酒は、高精白の酒米を使用する傾向があります。お米をたくさん削って高精白にすることは、雑味を減らし、お酒の香りをより際立たせることにつながるからです。

特に大変だったのは、米を洗って水を吸わせる作業ですね。心白が大きい影響で、適切に水を吸っているかどうかが目視ではちょっと見づらいんです。事前に試験をして、ストップウォッチで時間を計りながら目標の吸水率になるよう管理するのですが、本番では試験通りにならないことも多くて、いろいろと試行錯誤を重ねました。

福乃香の、高精白にすると扱いが難しという米質をよく理解し、もろみ日数を長くとって発酵をゆっくり進めるというやり方で、米の味と酒の旨味を両方出すことに成功しました。

「同じ仕込みでも、同じ酒にはならない」。日々の発酵と向き合う情熱

「こんなに面白いことはない」と、酒造りを語る管野杜氏

「こんなに面白いことはない」と、酒造りを語る菅野杜氏

――酒造りの現場はとても繊細で大変な作業だと思いますが、菅野さんはどんな瞬間が一番楽しいですか?

菅野専務もう最初から最後まで、造っている最中ずっと面白いですね。生き物相手なので、毎日見て同じような仕込みをしても、絶対に同じ酒にはならないんですよ。

蔵に泊まり込んで夜中も1時間おきに起きて麹の面倒を見たり、温度調整をしたり。もろみの匂いを嗅いで、発酵する音を聞いて。終盤になって発酵が落ち着いてきても、じっと見ているとそのうちポコポコと泡が浮かんできて、ああちゃんと発酵しているなと……。最終的には人が張りついていないとどうしても上手くいかないことが多々あります。

この仕事を始めて19年になります。入ったばかりの頃は、何をやっているのかわからなくて、面白くもなんともない。でもいろいろわかってくると、こんなに面白いことはないなと思いますね。

もちろん金賞をいただくその時は嬉しいですが、その瞬間からもう次の造りが始まっているわけで、「次はどうしよう」と考えています。

――酒造りが一段落したお休みの日に、なにかしたいことはありますか?

菅野専務:それが、どこに行きたいか、何をしたいかというのがわからないんですよ。
結局、休んでも蔵のことが頭に浮かんでくるので、おちおち休めないんですね。ずっと毎日、年中、酒造りのことを考えています。

福島市の自然や文化を担う企業を目指す

――公式ホームページにある「ふくしまを、醸す」というのがとても素敵な言葉だと思いました

斎藤社長:「醸す」という行為は、単に米と水を混ぜるだけではなく、1+1が、3にも4にも5にも膨れ上がっていくということです。今回、福島市産のオリジナル酒米と水で一切の余計な添加をせずに金賞を取り、第三者にその価値を証明できたことで、ようやく第一段階として「ふくしまを醸せた」と思っています。

私たちが目指すのは、福島市の自然や文化を担う企業になることです。地酒である以上、地元の原料が全国、ひいては世界に通用することを示すのが私たちの使命です。今回は本当に大きな自信になりましたし、これまで愛飲して支えてくださった皆さまに感謝しています。

――今後の夢や、次なる挑戦を教えてください

斎藤社長:次はこの「福島市だからこそできるお酒」を通じて、福島市のまちづくりや価値向上に貢献していきたいです。

一番大切にしたいのは、観光などで多くの方に福島市に「来てもらうこと」です。温泉やホテルに泊まり、金水晶を飲んで、福島を楽しんで帰っていただく。金水晶は、地元の方にも観光客の方にも愛される存在でありたいですね。

【おまけ情報 1】福島駅前で「金水晶」が飲めるおすすめの店

福島市に観光に来たら、ぜひ地元のお食事と一緒に金水晶を味わってみてください。
インタビューの中で斎藤社長に伺った、福島駅周辺で金水晶が飲めるお店をいくつかご紹介します!

金水晶にぜひ合わせてほしいお料理も、斎藤社長に教えていただきました。

斎藤社長:たいてい何でも合いますが、例えば純米酒や特別純米酒は、香りが穏やかで後味が綺麗なので、刺身、蕎麦、天ぷらなど、食材の素材重視で繊細な味わいの料理がよく合うと思います。
逆に、香りが立つ酒(純米吟醸、純米大吟醸)なら、料理の味付けや香りが強くても合いますよ。

【おまけ情報 2】金賞受賞酒、まだ買えます!

金水晶 四季の蔵は、試飲ができる直売所でもあります。全国新酒鑑評会の金賞受賞酒を飲みたい方、四季の蔵にまだ若干あります! 720mlのほか、300mlサイズがあるのも嬉しいですね。

在庫はあとわずかですので、ぜひお早めに。

ちなみに、金賞受賞酒は、香りが華やかでインパクトのある味わいですので、味の濃いお料理によく合うそうです(円盤餃子や、ローストビーフ、中華料理にも!)。私は取材後、斎藤社長にアドバイスいただいたローストビーフを買ってきて、さっそく合わせてみましたが、しっかりした味わいでキレのよいお酒とお肉の旨味が互いを引き立て合って、本当に美味しかったです。

金水晶酒造 四季の蔵は、事前予約をすれば蔵見学もできますので、ぜひお立ち寄りください。

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