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この夏「草間ワールド」にどっぷりひたる! 草間彌生 初の大規模版画展、福島県立美術館にて開催中

プレス内覧会で草間さんの作品の魅力と見どころについて聞きました。多数の写真とともにご覧ください!

一度見たら忘れられない鮮やかな水玉のかぼちゃが象徴的な、前衛芸術家の草間彌生さん。その独自の世界観で人々を魅了する世界的なアーティストの一人で、ルイ・ヴィトンとのコラボレーションでも知られています。

この夏、福島県立美術館にて、KFB福島放送 開局45周年記念「草間彌生 版画の世界 ―反復と増殖―」が開催されています(会期:2026年7月18日〜9月23日)。当展は、草間さんの故郷・長野県の松本市美術館の全面的な協力のもと、初期のリトグラフから最新作まで、約160点もの版画作品が一堂に会する、初の大規模版画展となります。

今回は開催前日に行われたプレス内覧会に参加し、長年にわたり草間作品を見つめてきた松本市美術館・学芸員の渋田見彰(しぶたみ あきら)さんに、展覧会の見どころや草間彌生さんの版画に込められた思いについてお話を伺いました。

記事の最後には、カラフルな水玉やかぼちゃがデザインされた展覧会オリジナルグッズの数々や、自分が草間さんの作品の一部になれるフォトブースもご紹介していますので、ぜひご覧ください。

(掲載している画像の無断転載・複製等はできません)

草間彌生さんのテーマ「反復と増殖」を体現する「版画」

展覧会入口では草間彌生さんが迎えてくれる

展覧会入口では草間彌生さんが迎えてくれる

——今回の展覧会の見どころについて教えてください

松本市美術館・渋田見彰さん:この展覧会は、2022年に松本市美術館で開催された開館20周年記念展の所蔵作品を中心に、一部を草間彌生さんご本人からお借りするかたちで構成されています。
草間さんは、幼少期から描き続けてきた水玉や網目をモチーフに、絵画や彫刻、インスタレーションなどを制作してきましたが、もう一つ大切に取り組んできた重要な作品がこれらの「版画」です。

今回、福島県立美術館のゆったりとした空間で作品をご覧いただけることになり、草間さんの版画の魅力や、版画に込められた想いが伝わりやすい展示となっています。ぜひじっくり楽しんでいただけたらと思います。

靴 Shoes 1984年 ©YAYOI KUSAMA

靴 Shoes 1984年 ©YAYOI KUSAMA

かぼちゃ P Pumpkin P 1999年 ©YAYOI KUSAMA

かぼちゃ P Pumpkin P 1999年 ©YAYOI KUSAMA

展示は、作品をあえて年代順には並べていません。年代順ではテーマが混然としてしまうため、「かぼちゃ」や「ラメを使った作品」「モノクロのエッチング(銅版画)」というように、テーマや技法ごとに章を分けて構成しました。
どのカテゴリーにも収まらない作品は、草間さんが本当に自由に描きたかったものとして、冒頭で紹介しています。

これにより、草間さんが版画を通して育んできたテーマや想いが、より分かりやすく伝わるのではないかと考えています。

松本市美術館・学芸員の渋田見彰さん

松本市美術館・学芸員の渋田見彰さん

会場風景

会場風景

——版画の魅力とは、どのようなところにあるのでしょうか

渋田見さん:版画は、1枚の原画からひとつの版を作り、そこから何十枚、時には100枚を超える作品が生み出される複製芸術で、増殖していくという特徴があります。
草間さんの制作の根源にある「反復と増殖」を、版画の技法そのものが体現している。まさに草間さんの芸術活動のぎゅっと凝縮された部分が、この版画作品だといえます。

草間さんはご自身で版を摺ることはせず原画の提供だけに集中し、最初のシルクスクリーン作品から現在まで、石田了一氏をはじめとする信頼できる一流の摺師に依頼しています。
ですので、数十年という長いスパンで版画作品が作られているにも関わらず、品質にブレがなく、最初から非常に高いレベルで制作されているのが大きな特徴です。

作品はすべて草間彌生さんの歩んできた人生そのもの

靴をはいて野にゆこう Going to the Field with Shoes On 1979年 ©YAYOI KUSAMA

靴をはいて野にゆこう Going to the Field with Shoes On 1979年 ©YAYOI KUSAMA

帽子 Hat 1986年 ©YAYOI KUSAMA

帽子 Hat 1986年 ©YAYOI KUSAMA

——草間さんにとって「版画」とはどのような表現だったのでしょうか?

渋田見さん:版画は、草間さんが一番苦しんでいた時代に彼女を支え、救ってくれた技法だと思います。
当時はそれまでの芸術家としての彼女への評価が覆ってしまい、作品発表の場も限られ、金銭的にも苦しい状態でした。そのような中で、版画は自身の表現をより多くの人に理解してもらうための方法であると同時に、作品を手に取ってもらうための技法でもありました。版画が制作活動を後押ししたとも言えます。

さらに、版画を通して「フラットな色彩」「増殖」「パキッとした線」などの表現を見出し、それが後年の大人気モチーフである「かぼちゃ」などの表現へと繋がっていきました。

苦悩を抱えながらも、版画では明るいモチーフや色彩を選んでおり、そのような版画の制作が草間さん自身を救ってくれていた、もしくは、そうせずにはいられない苦しさもあったのかもしれません。

——展示室に専用の部屋ができるほど「南瓜(かぼちゃ)」の作品が充実していますね

渋田見さん:はい。今回の展示の「章」を作るにあたり、かぼちゃを最優先にして構成を組んだほど重要なモチーフです。かぼちゃが描かれていれば、技法は何であろうがかぼちゃの部屋に持っていきました。

基本的に「植物」が草間さんの一番大事なモチーフです。
草間さんは、長野県松本市で種苗業を営む旧家に生まれ、花や畑に囲まれて育ちました。10代の頃は植物ばかり描いていたそうです。なかでも「太っ腹で愛らしい姿」だとお気に入りだったのが「かぼちゃ」なんですね。

草間彌生さんを代表するイメージといえばこの水玉のかぼちゃ

もし松本で植物に囲まれた生活をしていなければ、ニューヨークに渡って水玉の無限を見出さなければ、日本に戻ってきたあとこのような作品は生まれなかっただろうと思うと、草間さんの人生が積み上げてきたものがすべて作品に結びついていると言えます。

植物のモチーフもファッションも幼少期の実体験がベースになっていて、すべて草間さんが通ってきた道です。

——暗い空間に浮かび上がる、キラキラしたラメが使われた作品群も印象的です

渋田見さん:「ラメ」の作品は、シルクスクリーンの技法を応用し、色の代わりに粘着性のあるインクを刷り出して、そこにラメの粒子を押しつけて定着させるという工夫で作られています。
ですので、作品をよく見ると、下のほうにラメが落ちています(笑)。巡回展のリスクの一番が、移動のたびにラメが落ちてしまうことなのですが、これはしかたのないことですね。

草間さんは以前から立体作品にラメをまぶすことを行っていましたので、版画でラメを使用したというよりも、もともと作品の中で使っていたラメを、版画にも組み込んでいったということだと思います。

レモンスカッシュ Lemon Squash 1999年 ©YAYOI KUSAMA

レモンスカッシュ Lemon Squash 1999年 ©YAYOI KUSAMA キラキラと輝くラメの美しさは写真には写らないので、ぜひ会場で

——会期が夏休みを含んでいることもあり、多くの子どもたちが見に来ると思います。子どもたちにはどんなところを見てほしいですか?

渋田見さん:草間さんの幼少期は戦争もあり、また親からは絵を描くことを厳しく反対されるなど、必ずしも幸せな記憶ばかりではありませんでした。もっと愛されたかった、平和な時代に描きたかったという想いを、心の葛藤を乗り越えて作品にしています。

だからこそ、今の平和な世の中で、子どもたちがかぼちゃなどの身近なモチーフを素直に楽しんで笑顔になってくれることが、草間さんが一番望んでいることなのではないかと思います。

作品に出てくる靴や帽子、花、蝶々など幸せそうなモチーフは、草間さんが大好きなものであるとともに、幼少期に得られなかったものへの渇望でもありました。ですので、大人の方には、ただただ幸せな楽しい作品ばかりではないのだということを心の片隅に置いておいていただけると、より理解が深まると思います。

草間さんからお預かりした作品もありますので、多くの方に観ていただきたいですね。草間さんは今もお元気に活躍されていますので、どこかで展覧会の評判や皆さんの感想などが耳に入れば喜んでくださると思います。

「愛はとこしえ」と名づけられたシリーズで、黒のマーカーペンで100号のキャンバスに描かれた作品が原画となっている。

一枚だけ、サインのない作品が

——渋田見さんのお気に入りの作品を教えてください

渋田見さん:そうですね……、もしこの中で1点と言われたら、やはり最初に展示してあるこの作品《靴をはいて野にゆこう》ですね。これは草間さんの版画の、一番最初の作品です。これがなければ、今の草間さんはないだろうなと。

靴をはいて野にゆこう Going to the Field with Shoes On 1979年 ©YAYOI KUSAMA

靴をはいて野にゆこう Going to the Field with Shoes On 1979年 ©YAYOI KUSAMA

実は、この作品だけは、草間さんの「サイン」がないんですよ。

草間さんの女学校時代の同級生が大切に持っていた作品なのですが、ご自身で飾る際に、余白が邪魔だったのか切り取られてしまったんですね(笑)。切ってしまった部分は裏に貼られています。

その方が「松本に草間さんの作品を展示する美術館ができるなら」と十数点まとめて寄贈してくれた中の一枚で、松本市美術館の草間コレクションのスタートとなりました。

そんなエピソードのある作品が、草間さんが寄贈してくれた作品と並んで展示されているというのは、感慨深いものがあります。

松本市美術館・学芸員の渋田見さんに、草間彌生さんの歩んできた人生や、作品に込められた想いを教えてもらいました。渋田見さんが好きだという上記の作品は、会場入ってすぐ、1枚目に展示されています。
作品に添えられている草間さんの言葉もぜひ、絵とともに味わっていただけたらと思います。
音声ガイドは、スマートフォンのアプリで聞くことができます。詳しくは文末の詳細欄から、公式サイトでご確認ください。

自分も草間ワールドの一部になれる! フォトブース

美術館のホールには特設の「フォトブース」が設置されており、中では草間さんの作品が映し出され、その前に立てば自分が「草間ワールド」に溶け込み、一体となった写真が撮れますよ!
向かい側は鏡になっていて自分の姿も確認でき、スマートフォンを設置するスタンドも置かれています。

展覧会鑑賞の記念にぜひ写真を撮って、SNSなどにシェアしてください! その際は「#草間彌生版画の世界展」ハッシュタグをつけていただけたら、草間彌生さんに届くかもしれませんね。

展覧会オリジナルグッズをご紹介

草間さんの作品を観たら絶対ほしくなる、展覧会オリジナルグッズの数々を写真でご紹介します。

©YAYOI KUSAMA

展覧会の公式図録は、表紙のカラーが4種類から選べます(内容は同じです)。作品や、添えられていたコメントもあとから家でゆっくり振り返ることができますのでぜひ。

©YAYOI KUSAMA

©YAYOI KUSAMA

©YAYOI KUSAMA

グッズは、黄色いかぼちゃのクリアファイルや、ステッカー、カラフルな色づかいで思わず手に取りたくなるキーホルダー。
その他、Tシャツ、トートバッグ、オリジナルノート、ころんとした姿がまさにかぼちゃそのものの「がま口のポーチ」などなど……、かわいいものがたくさんあります。

関連イベント、ワークショップのご案内

スペシャルトーク&刷りの実演・体験「シルクスクリーンの面白さ」

草間彌生の版画を手がけている摺師、石田了一氏によるトークと、シルクスクリーン版画刷りの実演と体験。

日時 2026年8月9日(日) 14:00~15:30
会場 アオウゼ大活動室1・2(福島県福島市曽根田町1-18 MAXふくしま4階)
お申し込み 申込不要、参加費無料、先着順・定員100名。
備考 入場には企画展チケット(または半券)のご提示が必要です。
ご希望の方はシルクスクリーン刷りの体験が可能です。体験希望の方は、当日受付でお申し付けください。

記念講演会「草間彌生作品の拡張性」

女性アーティストの創作活動に詳しい中嶋泉氏(大阪大学大学院人文学研究科 准教授)が講師の講演会。

日時 2026年9月5日(土) 13:30~15:30
会場 福島県立美術館 講堂
お申し込み ※申込不要、聴講無料、先着順・定員250名

ワークショップ:線から生まれる表現~エッチング~

銅板に描画した線を腐蝕させる「エッチング」という技法で、それぞれが考えた下絵を元に版を作り、20×15㎝程度の作品を作る。

日時 2026年9月6日(日)、12日(土)、13日(日) 10:00~16:00 ※3日間連続
中学生以上10名程度を募集
会場 福島県立美術館 実習室
材料費 3,000円
参加について 申し込み受付期間 7月18日(土)~8月2日(日)
※申し込み多数の場合は抽選
お申し込み・お問い合わせ
TEL:024-531-5511
福島県立美術館 総合受付、美術館ホームページの申し込みフォームから

詳しくは、同展・福島会場公式サイトでご確認ください。

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