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福島駅東口再開発のこれまでと、これから
「たまご」から生まれる新たなストーリーに期待!
福島市や近郊在住の方はもとより、観光で訪れる方もちょっと気になっているかもしれない「福島駅東口再開発」。
駅東口にあった百貨店の中合だけでなく、西口のイトーヨーカドー福島店も閉店し、東西の駅前一等地が今は更地に……。この先どうなるのかなと思っている方もいらっしゃるでしょう。
駅東口は現在、再開発計画が進行中で、2029年度の完成に向けて準備が進んでいます。そこで、駅東口再開発について福島市役所 市街地整備課 副主幹の加藤徹郎さんにお話を伺ってきました。
この記事では、再開発の経緯をざっくり振り返り、取材時の2025年10月22日時点でどのような計画が進んでいるのかをご紹介します。
駅前の賑わいを取り戻し、さらなる発展につながることを期待したいですね!
目次
福島駅東口再開発の経緯
JR福島駅は、福島県の県庁所在地・福島市の玄関であり、そして首都圏から山形方面への玄関でもあります。
2018年、駅周辺の活性化と、市の交流・集客拠点設備の整備を狙って「風格ある県都を目指すまちづくり構想」、公民連携のプロジェクトがスタートします。
当初の事業計画では、民間事業者による老朽化した建物の再編、商業と居住スペースの集積、さらに市が公会堂や市民センターを統合し、コンベンション機能を強化した拠点を整備する計画でした。
この場所には、福島市の顔ともいえる中合(なかごう)という老舗百貨店がありました。しかし、東日本大震災や駅前再開発計画に伴う建物取り壊しの影響などを受け、2020年8月末、その146年の歴史に幕を下ろしました。
2022年7月には中合が入っていた辰巳屋ビルの解体工事が始まり、東口の再開発が本格化します。

再開発の様子
しかし工事の安全対策のために施された白い仮囲いが、駅前を殺風景な印象に……。そこで、こんなイベントも行われていました。

プレバト!!の企画による芸能人のスプレーアート

福島学院大生と福島東稜高校生によるデザイン画の展示
テレビの人気番組「プレバト!!」企画による、芸能人のスプレーアート展示や、福島学院大生と福島東稜高校生が共同制作したデザイン画の展示です。週末には、これらのアート作品を見ようと、県内外から多くの見物客が訪れました。
事業計画は2022年に一度決定しましたが、工事費の高騰により総事業費が当初の492億円から約2割も増加してしまう見込みとなってしまったこと、またコロナ禍の影響で商業規模を縮小せざるを得なくなり、当初の計画を見直す必要に迫られます。
劇場機能を備えた大型ホールの規模を縮小、さらにシティホテル誘致の計画が見送られ、事業を実施する再開発組合は、市と連携して計画全般を見直すことにしました。
「FUKUSHIMA EGG」をコンセプトに計画の見直し
その後、駅周辺まちづくり検討会やタウンミーティングを重ね、有識者や市民の方々の意見をすくい上げながら計画を見直し、今年2025年7月に基本設計が概成。「にぎわい・文化・つながりが生まれる『たまご』=FUKUSHIMA EGG」のコンセプトのもと、全体のイメージパース図が発表されました。
それがこちらです。

「たまご」が新たなストーリーを生むように、この施設が市民の皆さんや観光で訪れる方々に多様な体験を提供する拠点となることを目指し、ふくしまや日本・世界の名産に出会う、多様なネットワークが生まれ深まる、ふらっと立ち寄ってのんびりする、文化パフォーマンスに酔う、など12の利用シーンを想定した計画が進められています。
まちに開かれたフレキシブルホールが誕生
施設は、公共エリアと民間エリアの二つがありますので、まずは公共エリアからご紹介していきます。
公共エリア(パース図の前面〜左の建物)
全体のイメージパースを見て印象的なのは、2階から4階にかけてゆるやかに連なる屋外スペースと、駅前通りに面して開放された1階の「大屋根広場」ではないでしょうか。
大屋根広場の奥には、最大1,500人を収容する「フレキシブル・ホール」があります。このホールは開放して大屋根広場から通りへと空間をつなげることもでき、また3つに区切ってそれぞれのホールを利用することもできる、名前の通りフレキシブルに活用できるホールです。
大規模イベントや、マルシェ、フードイベントなどの利用が想定されていて、この大屋根広場から、駅前広場、さんかく広場、まちなか広場との連携も楽しめそうです。
ホールの利用がないときには、しきりを開放して人々の憩いの場として利用してもらう予定とのこと。

物産展(フードフェス)のイメージ

大屋根広場とフレキシブル・ホール
そのほか、人々が予約なしで気軽に立ち寄れる「まちなかリビング」を併設。
1階を客間、2階を居間、3階はこども部屋をイメージした空間とし、2階は本を読んだり学生が勉強できるスペース、3階は子どもたちがわいわい遊べるスペースを計画しています。

まちなかリビング1階

まちなかリビング3階
「屋上広場」は、変化に富んだスペースが小径で立体的に連なっていて、ゆっくり過ごしたり、遊んだり、ちょっとしたイベントも開催できるようなテラスになる予定です。オープンエアのとっても贅沢な空間だなと感じました。

3階テラス
県内初の「SHARE LOUNGE」や、体験型フードホールの計画も
民間エリア(パース図右奥の高層建築部分)
民間エリア(地上10階建て)には若者の集客やビジネス利用を意識した施設が入居する予定で、再開発組合により、入居テナント等の交渉や誘致が進められています。
1階には、大屋根広場との連続性を活かしたカフェや、県産品を揃えた物産館。2階は、USEN&U-NEXT GROUPの株式会社USEN Propertiesにより、福島の食とお酒が楽しめる横丁のような体験型フードホールが企画されています。
これは市民の皆さんだけでなく、観光や出張で福島市を訪れる方も楽しみですね!

オープンカフェのイメージ

物産館のイメージ

横丁のような体験型フードホールのイメージ
そして3階には、TSUTAYAや蔦屋書店を展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社の「SHARE LOUNGE」が県内初出店、本に囲まれた居心地のよいコワーキングスペースが誕生する予定です。

※写真はイメージ(TSUTAYA BOOKSTORE MARUNOUCHI SHARE LOUNGE)

※写真はイメージ(TSUTAYA BOOKSTORE MARUNOUCHI SHARE LOUNGE)
4階はクリニックなどの医療フロア、5階から10階はオフィスフロアとなっていて、地元企業や大手企業の支社・支店の誘致を計画しています。
その他、敷地内には約500台の駐車場棟が整備されます。
東西一体のまちづくり
2025年7月25日、福島市とJR東日本は、福島駅東西一体のまちづくりを推進するための覚書を締結しました。新しい東西自由通路の整備と、駅前広場の再構築に関する調査検討を協力して行うという内容が盛り込まれているとのこと。
現在ある地下の自由通路はちょっと暗いイメージなので、市は開放的で明るい通路の整備を通じて、駅東口と西口を行き来する人々が増えるようになることを目指しています。
西口のイトーヨーカドー福島店の跡地がどうなるかはまだ未定のようですが、東西通路が整備されれば相乗効果が期待できそうです。
また最近のニュースで、駅の北側にある商業施設「MAXふくしま」の1・2階に、来年2026年の夏頃「MEGAドン・キホーテ」がオープンする見通しとなったことも明るい話題です。(福島民友記事)
2029年春のグランドオープンを目指して
再開発ビルは、2026年度下期に着工し、2029年春のグランドオープン・開館を目指しています。
市は、ホール運営で85%の稼働率を目標とし、イベントやコンベンションの誘致を通じて、周辺地域に経済効果を生み出そうとしています。再開発エリア全体で年間約40億〜50億円の経済効果が期待されているとのこと。
「たまご」から大きな夢と未来がかえるよう、多くの人が集まり交流が生まれるような拠点となることを期待し、私たちも利用者としてこの場所を育てていけたら……、そう願っています。


写真左から、取材に協力いただいた市街地整備課の加藤徹郎副主幹、技査の阿部佑樹さん・小野英樹さんです。ありがとうございました。
関連情報
東口再開発と東西一体のまちづくりに関する特設ページ(福島市役所)
