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ベジタリアンもヴィーガンも、そうでない人も。みんな一緒に福島の食とお酒を楽しんでほしい!

インバウンド増加とともに高まる“食の多様化”対応へ、「あづま山麓ツーリズム」の試み

お酒好きな人の楽しみのひとつは、どんなお酒をどんな食事と合わせるか、あれこれ考えることではないでしょうか。

特に旅先では、その土地ならではの地酒や地ビール、地ワインに、地元の食材を合わせたペアリングを楽しみたいですよね。もちろん自分であれこれ試すのもいいけれど、宿泊施設や飲食店がペアリングメニューを提案してくれたら、ぜひ味わってみたい!

なんといっても市内には、地元の水と地元の素材で多様なお酒を醸す5つの酒蔵(日本酒、ビール2種、ワイン、どぶろく)が大集合。それらが市西部の吾妻山の麓に点在していることから、この地域は「あづま山麓ふく酒街道」と命名され、周辺の観光資源と組み合わせた「あづま山麓ツーリズム」として国内外からの観光客誘致に活かされているのです。

どんな食習慣の人も福島のお酒と食材を楽しめるように

その取り組みの一環で先日、「ヴィーガン向けペアリングディナー試食会」が開催され、福島市観光ノート取材班も参加してきました! 場所は福島市の三大温泉地のひとつ、土湯温泉の老舗旅館、山水荘(さんすいそう)です。

土湯温泉にある老舗旅館「山水荘」

「え、ヴィーガン向け? ヴィーガンって厳格な菜食主義で、肉・魚だけでなく卵や乳製品も使わない食のスタイルだよね。カツオだしもダメでしょ。それで温泉旅館のコースディナー??」
福島市観光交流推進室から試食会のご案内をいただいたとき、それが取材班の率直な反応でした。

そんな驚きとともに向かった先で目にしたのは、多様な食で旅行客のニーズに応えるべく進化する、福島市の新たな観光の姿。

そもそも山水荘では2025年4月からすでに、「あづま山麓ふく酒街道」のお酒5種と、福島牛や川俣シャモをはじめとする地域の人気食材とを合わせたコースを提供しており、人気を博しているといいます。

そこになぜヴィーガン向けを?
企画した観光交流推進室の工藤麻未さんと、市と共にあづま山麓ツーリズム推進を担当する株式会社インアウトバウンド東北 代表の西谷雷佐さんに聞きました。

事業について説明する西谷さん(中央)と参加者

「あづま山麓ツーリズムでは海外からの誘客にも力を入れています。地元のお酒+食材のペアリングは、外国人のお客さまにとってもたいへん魅力的なコンテンツなのです。一方、ご存じのとおり、海外には宗教や信条などによって多様な食のスタイルがあります。それらへの対応力を高めることは、これからの観光振興に欠かない視点と考えました」(工藤さん)

なるほど。たとえば、福島県における外国人宿泊者の地域別トップは台湾ですが、その人口の12%超がベジタリアン/ヴィーガンだそう(観光庁発表資料より)。これに対応できないことの機会損失は小さくないかもしれません。

「ヴィーガン1人を含む5人グループがいたとして、泊まりたいと思った宿がヴィーガン対応不可であれば、おそらく5人全員がその宿に泊まらない選択をしてしまうでしょう。そうではなく、ベジタリアン/ヴィーガンの人もそうでない人も、一緒に泊まって一緒にお酒と食事を楽しめる。それを可能にできないかと、今回は山水荘さんにチャレンジしていただきました」(西谷さん)

その結果、試食会で披露された試作コースは本当に驚くばかり。お料理の順番も皿数も、すでに提供している通常のペアリングディナーとまったく同じ。

試食会で提供された「ふく酒街道」のお酒たち。ワインは無濾過のものが用意されました(通常、ワインは不純物を取り除く濾過の際に、動物由来の清澄剤等を使用するため)

前菜には地元・土湯で造られるどぶろく、焼物や揚物には地ビール、お造りには地酒、強肴には地ワインと、全員が同じペースでお酒と料理のマッチングを楽しめるよう工夫されていました。

魚介の代わりに刺身コンニャクのカルパッチョ、豚肉の代わりに大豆ミートを使ったソテー、福島牛の代わりに厚揚げのステーキ、などなど。見た目はもちろん食感も考慮されていて、十分な満足感がありつつお腹にはやさしい。

高齢者やお腹の弱い方など、必ずしも菜食主義でない方からの需要もありそうです。多様なニーズに応えることはマーケットを広げること、という工藤さん・西谷さんの考え方がわかってきました。

まずは正確に理解し、できるところからチャレンジを!

試食会の目的は、こうした「多様な食への対応」について、土湯温泉のみならず飯坂・高湯といった市内の他の有名温泉地でも検討するきっかけにしてもらうこと。

当日は、市内で宿泊・飲食・観光業等に従事するみなさんが参加し、それぞれの視点から試作コースに対する感想や意見を交換するとともに、今日の学びを自身のビジネスの参考にしていきたいと語っていました。

試食後の意見交換の様子

また今回は、フードダイバーシティ株式会社 代表の守護彰浩さんがアドバイザーとして参加しました。専門家の観点から寄せられる貴重なコメントの数々に、みなさん試食しながら熱心にメモ。中でも「酒・料理とともに背後にある食材のストーリーや、なぜこの組み合わせなのかというロジックを一緒に提供することがポイント」という助言には、全員が大きく頷いていました。

「最初から完璧に対応しなくてもいいのです。まずベジタリアンとは何か、ヴィーガンとは何か、正確に理解することが大事です。これもダメ、あれもダメという印象だけでは、難しくて大変そうと尻込みしてしまうかもしれません。でも正しく理解して、まずできるところから小さくチャレンジしてみていただけたら」(西谷さん)

「ヴィーガン/ベジタリアンのお客さまが来たら対応を考える、では順番が逆。対応しているところにお客さまが来てくれるのです。多様化への対応に唯一の正解はありません。会席料理にこれは向かない、といった固定観念を取り払って考えることも大切ですね」(守護さん)

今回、山水荘 女将の渡邊いづみさんとともにヴィーガン向けコースを考案した、調理企画部 課長 阿部吉一さんは言います。 
「昔気質の料理人の中には、そんな新しいスタイルをやれと言われてもお断りという人はいるかもしれません。私もかつてそうでした(笑)。でも、それではもう時代についていけない。だから今回の挑戦は当たり前と考えました」

調理企画部 課長 阿部吉一さん

今回の試食会の結果を踏まえ、さっそく山水荘ではヴィーガン向けペアリングディナー商品化の検討が始まるとのことでした。

国内外から多様な食習慣を持った人たちが福島市を訪れ、その誰もが地元のお酒と食材をおいしく楽しめる――そんな日が徐々に近づいているようです。あづま山麓ツーリズムの今後の展開に期待がふくらみます。

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