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そばと日本酒のマリアージュ 女将の想いが息づく「松島屋桃香」リニューアルイベント
地元の人も観光客も集える飯坂温泉の交流拠点「matsumomo」、はじまりの一歩

2025年7月13日(日)、飯坂温泉にある老舗旅館「松島屋桃香」で、リニューアルオープンを記念したイベントが開かれました。
旅館の一角に誕生した地域開放型スペース「matsumomo(まつもも)」のお披露目を兼ねたこの催しは、これまで旅館を支えてくれた地域の方々への感謝を込めた、温かな交流の時間となりました。
手打ちそばと日本酒を味わいながら、matsumomoという新しい空間が生み出す人と人とのつながりを感じてきました。当日の様子をレポートします。
手打ちそばと金賞受賞酒が彩る、福島の味わい
本イベントの主役は、福島市パセオ通りに店を構える人気店「手打ちそば よしなり」の二八そば。会津や桑折町など福島県産のそば粉を使用し、matsumomo奥の厨房でていねいに茹で上げ、できたてを提供してくれました。
細めの麺はのど越しがよく、噛むたびにそばの香りがふわっと広がります。
お通しには、料理長手製の「いかにんじん」「長芋の漬物」「だし巻き卵」も。お酒にもよく合い、箸休めとしてもぴったりです。

matsumomoの奥にある厨房で調理する吉成和巳さん
「手打ちそばは乾麺よりも麺が伸びやすいので、できるだけ早く食べてほしい」と話す吉成さん。職人の技と気配りが感じられる一杯でした。
matsumomoは通常、宿泊者向けのフリードリンクコーナーですが、この日は特別に、全国新酒鑑評会で金賞を受賞した福島県内16蔵のうち、11蔵の日本酒が集結しました。
松島屋桃香の女将・高橋さんが知り合いや蔵元に掛け合い、品薄・完売のなか揃えたという貴重な銘柄ばかりです。こんなに多くの金賞受賞酒を一度に飲み比べできる機会は滅多にありません。

金賞受賞酒は試飲機から注ぎます

すべて福島県産の日本酒です
金賞受賞酒は、コイン制の試飲機から自分で注ぐスタイル。私は南会津町・花泉酒造の「ロ万(ろまん)」をチョイス。すっきりとした飲み口で、夫も家で愛飲しているお気に入りの銘柄です。
同行した編集部スタッフは、会津若松市・鶴乃江酒造の「会津中将」をチョイス。「ほどよい甘みとキレがあって、すごく飲みやすい」と話していました。
自分で選び、グラスに注ぎ、香りと味をゆっくり楽しめるのが良いですね。

クラフトシロップ1:炭酸水4がおすすめの割合

いちごのシロップと県産ウィスキーの炭酸割り
ほかにも、金賞受賞以外の県産日本酒、ワイン、焼酎、ウィスキーをはじめ、ビール、地元産フルーツを使った「カンパイバル」のクラフトシロップ、桃やりんごのジュースも。
炭酸水やお水で好みに合わせて割って飲むことができ、アルコールが苦手な方も楽しめる工夫がされていました。


おつまみはセルフサービスで、ガーリックトーストやミックスナッツ、クラッカーなどの日替わりの乾きもののほか、チョコ菓子やアイスキャンディーまで充実。
今後は冷蔵庫を設置し、小鉢料理なども自由に楽しめるような空間づくりを進めていく予定です。
イベントは終始アットホームな雰囲気。高橋さんやスタッフとの会話はもちろん、相席になった方との交流も自然に生まれます。
川沿いの窓際席では、一人で静かにお酒を楽しむ姿も見られ、それぞれが自分らしい時間を過ごしていました。
女将の想いに共鳴した「地域の仕掛け人」たち

左から吉成和巳さん、イベントを主催した松島屋桃香の女将・高橋美奈子さん、一條年広さん
高橋さんの「matsumomoを、地域を巻き込む場にしたい」という想いに共感したのは、有限会社新条産業・代表の一條年広さん。廃棄物処理業を営みながら、地域をつなげる「仕掛け人」として飯坂で広く知られる存在です。
高橋さん自身も、福島県「ふくしまの酒地域案内人」第1期生の総代として活動しており、今年福島県が3年ぶりに新酒鑑評会で金賞受賞数日本一を奪還したことも、「今こそ県産日本酒を広めたい」という想いを後押ししました。
そしてもう一人、イベントの実現に欠かせなかったのが、「手打ちそば よしなり」の店主・吉成和巳さん。食楽研究家として、カルチャースクールなどのそば打ち体験や出張そば教室などを通じ、そば文化の普及に力を注ぎながら、今回のような地域イベントにも積極的に参加しています。
実は、吉成さんと高橋さんは、かつて商工会青年部で共に活動していた旧知の仲。一條さんを介して久しぶりに再会し、三人のつながりがこのイベントへと自然につながっていったのです。
matsumomoでは、これからも地域のつながりを原動力に、訪れる人の心に残るイベントが次々と生まれていくはずです。
matsumomoのこれから

イベント会場となったmatsumomo
高橋さんに、matsumomoのこれからについて伺いました。
「2〜3か月に一度はこんなふうにイベントを開きたいですね。飯坂温泉への観光客や宿泊してくださるお客様はもちろん、地域の方にも来てもらえたら嬉しいです」と語ります。
さらに今後は、高橋さん自身がイベントを主催するだけでなく、地域のチャレンジャーたちに場を開放していきたいと話します。
加工場がなくて困っている農家、6次化に乗り出したい菓子製造の事業者、将来お店を持ちたい食物栄養科の学生など、さまざまな人が厨房や加工室、matsumomoを活用して実践できる場を目指しています。
開発・製造した食品や商品などは、松島屋桃香の宿泊客に試食してもらうことでリアルな声をフィードバック。この「アウトプットの場」があることも、旅館ならではの強みです。
試して、学んで、そして稼げる。そんな循環が生まれる拠点にしていきたいのだそうです。
さらに、貸切風呂の時間貸しや、200着以上ある色浴衣のレンタルも合わせて、チェックアウト後〜チェックインまでの“空白時間”を有効活用できる場としての展開も検討中。
旅館の中にお客様を囲い込むのではなく、地域とお客様をゆるやかにつなぐ拠点へ。これからの温泉旅館の新しいかたちがここにあります。
飯坂温泉に広がる、新しい楽しみ方
「リニューアルしてから、やりたいことがどんどん出てきて。トライ&エラーで模索中です」と語る高橋さん。今回のイベントは、そんな松島屋桃香の挑戦の第一歩といえます。
今後、一般に開かれる予定のイベント情報は、観光ノートでも随時ご紹介していきます。ぜひmatsumomoを訪れて、飯坂の新たな魅力に触れてみてください。