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クリエイターとしての魅力にふれる「竹久夢二のすべて」展、福島県立美術館で開催中!
福島とゆかりの深かった夢二の足跡を作品とともに辿る特別展示も。会期は12月14日(日)まで
愁いを帯びた大きな瞳としなやかな姿が印象的な美人画を描き、大正ロマンを代表する画家として知られる「竹久夢二」。絵画に詳しくなくても「これは竹久夢二の作品だ」とすぐわかる、そんな美人画は「夢二式美人」と呼ばれ、今でも多くのファンがいます。また、美人画だけでなくデザイナーや詩人としても大活躍していた、時代の最先端を行くクリエイターでした。
そんな竹久夢二、実は福島県にゆかりが深かったことをご存知でしたか?
現在、福島県立美術館にて開催中の「竹久夢二のすべて——画家は詩人でデザイナー—— 」展では、福島会場だけの特別企画として福島ゆかりの作品も展示されており、見逃せません。
この記事では、竹久夢二展の見どころと、夢二と福島との縁をご紹介します!
目次
福島会場では福島にゆかりのある作品を展示
竹久夢二の生誕140年、没後90年を記念して開催されている「竹久夢二のすべて」展。
夢二作品を所蔵する美術館は全国にいくつかあるそうですが、今回の展覧会は京都・嵐山にある福田美術館が所蔵する、実業家・河村幸次郎のコレクションを12年ぶりにまとめて公開するものです。

今回の福島県立美術館での展示には、全国巡回展の作品に加え、画業を通じて福島を訪れていた夢二の足跡を、ゆかりの作品とともに辿るコーナーが設けられています。
嬉しいことに、ほとんどの作品が写真撮影可能です。
時代の先端を行くマルチクリエイターだった竹久夢二
ここで説明する必要がないほど有名な竹久夢二ですが、簡単におさらいしながら、展示作品をご紹介していきましょう。
竹久夢二は、1884年(明治17年)岡山県生まれ。
17歳で単身上京、早稲田実業学校在学中から絵を投稿していましたが、20歳のとき、出版社の書籍に初めて夢二の「コマ絵」が掲載されます(この頃から「夢二」を名乗りはじめました)。
1909年(明治42年)、最初の著書『夢二画集 春の巻』を発刊。これがベストセラーとなり、世の中に広く知られるきっかけとなりました。

最初の著書の翌年、1910年(明治43年)に刊行された『夢二画集 花の巻』
その後、人気雑誌『子供之友』『新少女』の挿絵や表紙絵、さらには流行歌の普及に一役買った『セノオ楽譜』の表紙画シリーズなど、イラストやグラフィックデザイン、詩や小説などで幅広く活躍。それらは印刷物として全国の庶民の手に渡り、さらに夢二人気を高めました。
セノオ楽譜のシリーズからは、夢二の詩に曲がつけられて大ヒットした『宵待草』も生まれています。

セノオ楽譜の表紙画

セノオ楽譜「巷の雪」表紙画。竹久夢二詩と書いてある
1914年(大正3年)には、自らデザインした雑貨を販売する「港屋絵草紙店」を開きました。店は連日、若い女性たちで賑わったといいます。

夢二がデザインした便箋

夢二がデザインした千代紙。とてもモダン
そして1920年(大正9年)、夢二36歳のころ『長崎十二景』『女十題』のシリーズを制作。夢二を代表する作品群となりました。

『長崎十二景 眼鏡橋』一目でわかる夢二式美人、まさに大正ロマン!

『女十題 北方の冬』北方は「きたかた」、喜多方が舞台と思われる絵。
夢二の人生には妻を含めて主に三人の女性が関わり、私生活は愛憎入り乱れて波瀾万丈だったようです。
しかしその女性たちの存在や、美しい女性にどうしようもなく惹かれてしまう夢二の心そのものが、大正ロマンを代表する美しい作品たちへと昇華したのでしょう。


雑誌・書籍の表紙や挿絵を見ると、洒落たロゴタイプに、外国の美術に影響を受けたデザインもあり、夢二が非常に器用で多才なデザイナーで、さらには詩や文章も書くという、今でいうマルチクリエイターだったことがよくわかります。

自分らしい良さを貫き、絵は独学
夢二は、絵は独学なのだそうです。
取材に対応してくれた同館学芸員・紺野朋子さんによると、夢二は美術学校に通おうかと悩んで、当時を代表する画家・岡田三郎助のところに相談に行ったところ、あなたのような人がそういうところに入ってしまうと、あなたらしい良さがなくなってしまうよ、という旨のアドバイスを受けたそうです。
そうして独自の領域を切り開いていった夢二は、洋画、日本画の境界も超えて、多彩な活躍をしました。

夢二の手による書籍デザイン
夢二は「文展」のような権威的な展覧会ではなく、市井の人々が手に取る出版物や全国各地で開催された頒布会などを通じて、多くの人々に支持された画家でした。訪れた各地で先生として迎えられましたが「やさしくて、全然偉ぶらない人だった」という話が伝わっているそうです。
夢二の絵そのものも「かしこまっておらず自然な女性の姿を描いているから、こちらも共感しながら見られるのがいいですよね」と紺野さん。

取材にご協力いただいた同館学芸員・紺野朋子さん(右)
福島との縁
夢二は画業を通じて全国を旅し、そのなかで福島県内には、記録に残るだけでも5回ほど長期滞在しています。
なぜ繰り返し福島を訪れていたのか。それは、早稲田実業学校の同級生が、福島出身だったからです。
片曽根村(現・船引町)出身の助川啓四郎は、夢二の生涯にわたる親友で、夢二が有名になるきっかけとなった最初の著書『夢二画集 春の巻』刊行にあたり資金援助をしています。
また夢二は助川の紹介で福島市を訪れているほか、一時は大逆事件(明治43年に多数の社会主義者や無政府主義者が検挙・処罰された事件)の余波を逃れて会津にも滞在していたそうです。
今回の展覧会では、特別展示として最後のブースに福島ゆかりの作品と、助川に宛てた手紙などが展示されています。

福島や古関裕而にまつわる作品

「何かにつけては君の噂は小生の家人の話題にのぼる」と、助川啓四郎氏に宛てた手紙
また、夢二が福島県内を回って制作した詩画を見て、作曲家の古関裕而がその詩に曲をつけ、古関のデビュー曲の一つとなったというエピソードもあるそうです。
美術館1階の展示会場だけでなく、2階の常設展が行われている会場の一部にも夢二の作品が展示されていますので、忘れずに2階にも足を運んでみてくださいね。
「詩と美術」をテーマに、竹久夢二とその周辺の画家たちが紹介されています。
ミュージアムグッズも夢二らしいかわいさ
さすが竹久夢二の展覧会だけあって、グッズもかわいいものがたくさん揃っていますよ!

こちらは会津若松市の老舗和菓子店「長門屋」さんとのコラボ商品。和三盆のシュガーマドラーと珈琲のセット。その他、練羊羹と塩羊羹も。
ほかにも、夢二がデザインしたイラストがあしらわれたグッズが多数……。かわいくて欲しくなってしまうものばかりです。


一世を風靡した美人画のほか、クリエイターとして大活躍した夢二の足跡を辿る「竹久夢二のすべて」展、会期は2025年12月14日(日)までとなっています。
たくさんの写真でご紹介しましたが、やはり実物を目にする感動にはかないません。ぜひ足を運んで、夢二の描いた大正ロマンを堪能してください!
タイミングを合わせて、ギャラリートークで学芸員さんの解説を聞いてみるのもオススメです。作家や作品の新たな魅力を知ることができて、展覧会がより一層興味深くなること間違いなしです。
学芸員によるギャラリートークもあり
ギャラリートーク |担当学芸員による作品解説
日時:2025年11月8日(土)、11月22日(土) 各日14:00~15:00
会場:企画展示室 ※観覧券をお持ちのうえ展示室入口にお集まりください
企画展:竹久夢二のすべて 詳細
| 期間 |
2025年10月18日(土)~12月14日(日) |
|---|---|
| 会場 | 福島県立美術館(福島県福島市森合字西養山1番地) |
| 料金 |
一般・大学生1,300円(1,200円)、高校生800円(700円)、小・中学生500円(400円) |
| 休館日 | 毎週月曜日(11月3日、11月24日は開館)、11月4日(火)、11月25日(火) |
| 駐車場 | あり ※公共交通機関のご利用にご協力ください |
| 公共交通機関 アクセス |
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| 問い合わせ | 福島県立美術館 TEL:024-531-5511 |
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福島県立美術館の近くにあるカフェなど
展覧会で心を満たしたら、カフェでちょっと一息ついてはいかがですか? 美術館に併設の「笑夢」をはじめ、歩いて行ける範囲に素敵なカフェがありますよ!




