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福島の果物を食べて育つ鶏から生まれる「フルーツエッグ」|老舗洋菓子店レパコが卵づくりまで手がける理由

規格外の果物を餌に約1,200羽を平飼い。町庭坂の農場で見えた人と地域をつなぐ「おいしい循環」

桃やりんごなど、美味しい果物の宝庫として知られる福島。「旬のくだものを味わいたい」と楽しみに訪れる方も多いのではないでしょうか。

今回ご紹介するのは、そんな福島の果物を食べて育った鶏から生まれる、ちょっと特別な卵「フルーツエッグ」です。

福島市町庭坂、吾妻連峰のふもとに、この卵が産まれる養鶏場があります。手がけているのは、福島県内を中心に洋菓子店を展開する「レパコ」。お菓子に欠かせない卵を、自分たちで鶏を育てるところからつくっています。

なぜ、お菓子屋さんが卵まで?

その理由をたどっていくと、果物、人、そして地域がつながる「おいしい循環」が見えてきました。

今では全国から注文が届き、注目を集めているフルーツエッグ。実際はどのように生まれているのか、町庭坂の農場「レパコエッグファーム」を訪ね、卵づくりの背景と、そこに込められた想いを伺いました。

お菓子に欠かせない卵を、自分たちの手で

今回、レパコエッグファームを案内してくださったのは、農場長の小野寺智子さんです。

案内してくださった、フルーツエッグファームの農場長 小野寺智子さん

案内してくださった、フルーツエッグファームの農場長 小野寺智子さん

特別の鶏舎に入らせてもらうと、鶏たちが集まってきました。後ろをついてきたり、長靴をツンツンとつついたり。人を怖がっている様子はまったくありません。

人に慣れた鶏たちは、こちらに興味津々

人に慣れた鶏たちは、こちらに興味津々!

――そもそも、なぜお菓子屋さんのレパコが卵づくりを始めたのでしょうか?

小野寺さん:「もともと社長が、ケーキとかお菓子を作る上で、卵、小麦、バターにはすごくこだわっていたんです。自分たちで納得のいくものを何か作れないかとなったときに、『じゃあ卵やってみようか』というところから、始まりました」

とはいえ、養鶏は初めてのこと。スタートは、小さな小屋で10羽ほどの鶏を育て、餌や飼育方法を考えながら経験を重ねたそうです。

それから5年。現在、農場で育てている鶏は約1,200羽になりました。その間、試行錯誤を重ねてきた一つが、鶏たちが毎日口にする「餌」です。

福島の果物も取り入れて。鶏と向き合い、つくる餌

フルーツエッグの餌づくりを見せていただくと、そこには実にさまざまな材料が使われていました。

ベースとなるのは、山形の酒蔵から譲り受けた米ぬか。そこに地元の農家さんから届くリンゴや桃、福島市のワイナリーから譲り受けたポマース(ブドウの搾りかす)など地域の恵みがずらりと並びます。

ワインづくりの過程で出るブドウの搾りかす「ポマース」。すごくいい香り

ワインづくりの過程で出るブドウの搾りかす「ポマース」。すごくいい香り

リンゴや果物は、落下したものや鳥につつかれたものなど、商品として販売できないもの。生のリンゴが手に入らない季節にも使えるよう、ペースト状にして冷凍もしておくそうです。

さらに見せていただいたのが、長い時間をかけて発酵・熟成させた餌です。米ぬかに、豊富な栄養素を含むバナナと水を発酵させた独自の「バナナ発酵水」などを混ぜ、1年半〜2年半ほど発酵・熟成させています。

米ぬかに「バナナ水」を混ぜ、発酵中の餌

米ぬかに「バナナ発酵水」を混ぜ、発酵中の餌。お漬物のような香り

卵を産む鶏だけではなく、その鶏が毎日食べるものにも、これだけの時間をかけていることに驚きました。

でも、果物なら何でもいいわけではありません。これまで水分の多い果物を試したこともあったそうですが、鶏たちの排泄物の状態を見て、餌には使わなくなったものもあるそうです。

――鶏たちの様子を見ながら、餌も変えてきたんですね。

小野寺さん:「鶏たちに何が合うのかを考えながら、餌は少しずつ変えてきました。毎日、鶏たちと過ごす中で、気づくことや学ぶことがあります」

「臭くない」鶏舎で見えた、もう一つの循環

約1,200羽の鶏が暮らす平飼いの鶏舎。

約1,200羽の鶏が暮らす平飼いの鶏舎

鶏舎に入って、もう一つ驚いたことがあります。それは、臭いが気にならないことです。正直、養鶏場に入る前は、もっと強い臭いを想像していました。

小野寺さんによると、ここにも餌が関係しているそう。鶏の腸内環境を考えた発酵・熟成餌にこだわることで、ふんの臭いが軽減されるといいます。

さらに、鶏たちの足元に敷かれているのは、農家さんから譲り受けたもみ殻です。もみ殻は、鶏たちが毎日動き回る中で土やふんと混ざり、1年半〜2年ほどかけて自然に発酵・熟成していきます。

鶏舎では、歩いたり休んだりと、鶏たちのさまざまな姿を見ることができました

鶏舎では、歩いたり休んだりと、鶏たちの自由な姿を見ることができる

そして、鶏を入れ替えるタイミングで鶏舎からもみ殻を出し、今度は肥料として農家さんへ渡します。農家さんから届いたもみ殻が鶏舎で使われ、鶏たちが過ごすことで肥料になり、また農家さんのもとへ戻っていきます。

餌に使う果物やポマース、鶏舎に敷くもみ殻。地域の中で生まれたものを、そのまま終わらせず、鶏たちの餌や飼育に生かしていく。廃棄されるはずだったものが、また次のおいしさへと繋がっていく……そんな循環が、ここにはありました。

鶏ファーストな「平飼い」の鶏舎

現在、レパコエッグファームで暮らしているのは約1,200羽。すべてメスの鶏です。

鶏舎を見渡すと、餌を食べている鶏もいれば、砂で遊んだり歩き回る鶏、隅の方でのんびりしている鶏も。フルーツエッグの農場では、鶏をケージに入れず、鶏舎の中を自由に歩き回れる「平飼い」を取り入れています。

近くで見ると、鶏たちは思っていた以上に筋肉質。元気に歩き回る姿が印象的です。

1日2回の餌に夢中になる鶏たち

1日2回の餌に夢中になる鶏たち

鶏には「物陰や暗くて狭い場所で産卵したい」という習性があるため、卵を産むための「ネスト」という産卵場所も用意されています。ネストで産まれた卵はベルトコンベアで運ばれますが、すべての鶏がそこで産んでくれるわけではありません。

卵の汚れ防止や効率的な回収のため設置されている巣箱(ネスト)

養鶏場の隅っこなど、自分のお気に入りの場所で産む鶏も多いそうです。そうした卵は、スタッフのみなさんが鶏舎を歩き、一つひとつ手で拾います。

ネスト以外のお気に入りの場所で産まれた卵。こうした卵はスタッフが一つひとつ拾います

ネスト以外のお気に入りの場所で産まれた卵。こうした卵はスタッフが一つひとつ拾います

若い鶏たちがこの鶏舎にやってきたときには、ネストへの上がり方もまだわかりません。高いところへ上がれるよう、抱き上げて乗せ、使い方を教えてあげるそうです。

ネストへ上がれるように設けられた木製のはしご

ネストへ上がれるように設けられた木製のはしご

また、農場に来たばかりの若い鶏たちは、人が入ると逃げ回ってしまうことも。人が来るたびに怖がることがストレスにならないよう、毎日接しながら少しずつ人に慣れてもらうんだそうです。

鶏を大事にすることが、卵を大事にすること

ここまで農場を案内してもらう中で、餌づくりにも、鶏たちのお世話にも、たくさんの手がかかっていることがわかりました。

――養鶏を続けてきて、大変だったことはありますか?

小野寺さん:「日頃から“大変”や“苦労”という捉え方はしたくないんです。仕事をするなら、一日の中で『楽しかったな』ってほうを大事にしたい。なので、嫌だなと思ったことは一度もないんです。そんな中でもあえて大変と言うなら、毎年乗り越えている暑さや寒さですかね。農業と一緒で、暑さや寒さの中で仕事をしながら、いかに鶏たちを守るかを日々考えています」

集めた卵は一つひとつ確認しながら選別。フルーツエッグが商品になるまでにも人の手がかかっています

集めた卵は一つひとつ確認しながら選別。フルーツエッグが商品として届くまでに、人の手でていねいに仕分けされている

――では、フルーツエッグづくりで一番大切にしていることは何ですか?

小野寺さん:「卵が大事ということは、鶏が大事ということ。鶏がどんな環境で育ち、どんな餌を食べているかは、すべて卵に表れます。だから、鶏を大事にすることが、卵を大事にすることだと思っています」

小野寺さんの目線は、卵の向こうにいる鶏たちに向いています。私には、小野寺さんが鶏たちのお母さんのように見えました。

農場を知ってから味わう、フルーツエッグ

農場で鶏たちを見て、餌づくりの話を聞いたあと、実際にフルーツエッグを味わってみました。

レパコガーデンでいただいた、フルーツエッグを使ったエッグベネディクト

レパコガーデンでいただいた、フルーツエッグを使ったエッグベネディクト(税込1,452円 取材時)

まずいただいたのは、福島市下鳥渡にある「レパコガーデン」のエッグベネディクト! 卵にナイフを入れると、中から黄身がとろり。卵の甘みとコクがしっかり残ります。

そして、レパコエッグファーム直売所で買ったフルーツエッグは、自宅で何もかけずに生のまま。

農場の直売所で購入したフルーツエッグ(税込750円/10個入)

農場の直売所で購入したフルーツエッグ(税込750円/10個入)

器に割ってみると、健康的なひまわり色で自然体なエネルギーを感じます。箸を入れると黄身にも白身にもしっかりと弾力が。混ぜると、白身に押し戻されるほどの強いハリがあります。

口にすると、まず感じたのは甘み。卵特有の生臭さやクセがほとんど感じられず、すっきりとしていて、さわやかな余韻が残りました。

何かを足さなくても、卵そのものを味わいたい。私にとっては、感動を覚えるほどのおいしさでした!

旅先で食べるものの向こう側に、まだ知らない福島が!

今回、レパコエッグファームを訪れて改めて感じたのは、一つのおいしさの背景に、たくさんの人の想いと繋がり、そしてモノが無駄なく巡っていく循環があることでした。

農家さんの規格外の果物や、もみ殻、ワイナリーのポマース、酒蔵の米ぬかなど、それぞれが鶏たちの餌や飼育に活かされ、卵へとつながっていく。そして、鶏舎のもみ殻やふんは、今度は肥料となって農家さんのもとへ戻っていく……。人から人へ、ものから次のものへ。ひとつの卵を通して、いろいろな繋がりが見えてきました。

旅先で味わうのも、自宅で楽しむのも、その背景を知ってから食べると、きっと感じ方が変わります。福島の恵みと人の想いが織りなす、新しい「おいしい循環」を、ぜひご堪能ください。

レパコエッグファーム 基本情報

レパコエッグファームの直売所

レパコエッグファームの直売所

店舗名 レパコエッグファーム直売所
住所 福島市町庭坂字山ノ下47
TEL 0120-085-014(※レパコフリーダイヤル)
営業時間 10:00~16:00
定休日 不定休
駐車場 あり
HP・SNS

公式ホームページ

公式Instagram

アクセス 【車】東北道 福島大笹生ICより約5分
【電車・バス】JR奥羽本線「庭坂駅」から約30分
備考 フルーツエッグは、レパコエッグファームの直売所のほか、レパコオンラインショップおよび一部店舗、福島市ふるさと納税でも購入できます。

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