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旧旅館 × eスポーツで温泉街に新しい循環を! IBUSHIGINが実践する「ゲーミング旅館」構想
湯けむりの街から世界へ! プロゲーミングチーム IBUSHIGIN が紡ぐ、人と文化の新しい物語
飯坂温泉にある旧旅館を拠点に、東北出身選手のみで編成されたプロゲーミングチーム「IBUSHIGIN(イブシギン)」が注目を集めています。彼らは住居と練習場、一般開放のゲーミングスペースを一体化し、競技と地域交流の両立を目指しています。
そんな彼らの活動について、マネジメントを担う株式会社アスピロンド管理部の鳥浜誠(とりはま まこと)さんに、チームの現在地と“温泉街 × eスポーツ”が切り拓く未来を伺いました。
東北出身者が集い、世界へ挑む
——チーム「イブシギン」結成の経緯やメンバー構成、活動状況を教えてください。
私たちは、カプコン公式の『ストリートファイター6』リーグに、東北で唯一参加しています。特徴は「東北出身者でチームを構成する」というコンセプトで、現在在籍する7名は全員が東北出身、世界チャンピオン経験者もいます。国内外の強豪と日常的に切磋琢磨できる体制を整えています。
堅実に、真摯に競技に向き合う“渋い”スタイルをチームの芯に据えていることから、チーム名「IBUSHIGIN」が生まれました。
団体戦は一人でも欠けると勝てないため、選手の体調管理は欠かせません。今やeスポーツの認知は広がり、筋力トレーニングや睡眠・栄養管理など、競技外の取り組みも当たり前になっています。

フロアに飾られたオリジナルクッション。福島愛があふれている
——なぜ旅館で、なぜeスポーツなのかが気になります。旧旅館・赤川屋を活用するに至った経緯と、建物・場所の魅力は?
チームオーナーが県内の温泉旅館に勤務していた経験があり、その知見を活かして「eスポーツができる旅館」を飯坂で探したのが出発点です。
赤川屋は“古民家”と呼ぶには規模が大きいですが、一旦役目を終えた建物を利活用し、宿泊や観光誘致と結びつけることで、地方創生にも資する拠点に育てたいと考えました。
2025年1月、別々だった選手の住居とゲーミングスペースを旧赤川屋へ統合。下層フロアを練習・一般開放、上階を居住スペースとし、日常的に練習できる“住環境一体型”の拠点を整えました。

近くを流れる赤川から聞こえてくるせせらぎがとても心地よい
オンライン競技とはいえ、同じ場で顔を合わせ、表情を見ながら戦術を詰める価値は大きいですね。オンラインの強みを活かしつつ、温泉街というリアルな場に“会って話せる居場所”を持つこと。これにより選手は、競技力だけでなく、コミュニケーション力や自己管理、チームワークといった、次の学びや仕事につながる力が育まれます。
例えば温泉をよく利用されるシニアの方にとっても、ゲームは脳活・交流の入口になり、世代を越えて関われる……、それが地域事業としての価値だと考えています。
また、試合によってはオンライン観戦が15万人を超えることもあり、勝利の表情が伝わることはファンにとっても魅力です。憧れの選手の実プレーを間近で見られることから、ヘアケアやプロテインといった商品タイアップも広がっています。

疲れた選手の体を癒す、100%掛け流しの温泉
世代を超えた交流を生む“地域のハブ”としての役割
——「地域にゲーミングスペースを作る」発想はどこからでしょうか、また、地域の方の反応はいかがでしたか。
eスポーツを地域交流のハブにしたい、という思いが出発点です。土日祝は施設を一般開放し、競技志向の若者から初心者、親子連れ、観光客まで幅広く受け入れています。
福島市に移住した常駐スタッフが設備管理や受付を担い、初めての方でも安心して体験できる環境を整えました。
活動当初は“見慣れない・聞き慣れない”存在として好意的ではない声もありましたが、メディア露出や試合実績の積み重ねで理解が進み、まちで声をかけていただく機会も増えています。

奥州三名湯に数えられる飯坂温泉。多くの観光客でにぎわう「福島の奥座敷」
——ゲーミングスペースを通じ、どんな地域効果を見込んでいますか。
大会や体験会を軸に来街・宿泊の回遊性を高め、飯坂の温泉・食・産品に触れていただく導線を描いています。先述の通り、シニア向けにはリズムゲーム等の出張運営も行い、年齢や経験を問わず交流が広がる手応えがあります。
現在も月1回程度のペースで県内各地に出向き、テクニックを見ていただく機会を設けています。“反射速度”がものを言うガンシューティングでは選手寿命が短めとされますが、格闘ゲームは経験の蓄積が大きく、活動期間・年齢は年々広がっています。
幼少期からゲームに親しみ、プロとして世界最強を目指す。選手たちはその目標を本気で追っているので、その気概を間近で感じてほしいですね。

来年の春の開業を目指し、日帰り入浴・宿泊、飲食施設を準備中
地域資源を活かした「地産地発信」とチームの未来
——将来的に「地元大会の開催」も視野に?
もちろんです。駅前エリアと温泉街の二拠点展開を視野に、大会・合宿・交流会を面的に展開したいですね。スポンサーシップでは、福島市内に工場のある企業や再開発ディベロッパーとの連携が進んでいます。
また、新デザインラベルの日本酒とのコラボといった「地域資源×eスポーツ」の取り組みも構想中です。地域外の資源と地域の魅力をつなぐ役割も果たしていきたいと考えています。
——大会を通じて、地域や応援してくれる方々へどのように還元しますか。
親子で関心を持つ方が増え、「イブシギンに入りたい」という小中学生も増加中です。今後はデジタル上でもそうした学びの環境を提供したいと考えています。
プロとして成績を追うのはもちろんですが、挑戦のプロセス自体を地域に開くことにも意味があります。イベントや公開練習、体験会を通じて、子どもたちが“好き”をキャリアに結びつけるイメージを持てるようにしてあげたい。
福島の良さを“地産地消”ならぬ“地産地発信”で世界へ……。選手の影響力を観光や文化と掛け合わせ、新しい来訪の導線づくりに貢献していきたいと思っています。

フロアには選手が世界中の強豪選手と交換したTシャツの一部が記念に飾られていた
——空き旅館とゲーミングスペースを結びつけた挑戦は、この先どこへ。未来像をお聞かせください。
目指すのは「住む×練習×交流」を内包した地域のハブです。宿泊機能の再整備、試合・合宿の受け入れ、教育・福祉領域へのプログラム展開を段階的に進め、駅前と温泉街で人の流れを双方向に生み出していこうとしています。
行政・学校・観光団体とは、公開可能な範囲で実績の整備と情報発信をていねいに重ね、必要な連携を積み上げていきます。スポンサーや支援者のみなさまとともに、“共につくる場”として拠点を育てていきたいです。

チームがデジタルを通じて、地域と共に歩む活動はこれからも続く
——最後に、チームが思い描く「理想の地域像」をお聞かせください。
eスポーツは地域の入口の一つにすぎませんが、子どもからシニアまで誰もが参加できる“共通言語”になり得ます。また「インバウンド向けの大会開催を飯坂で」というリクエストもあります。
旧旅館「赤川屋」という器を拠点に、温泉街の文化や暮らしとつながる新しい物語を、地域の皆さんと一緒に紡いでいきたい、そう考えています。最新のイベント情報は公式サイトやSNSで随時発信していますので、ぜひご覧ください。
IBUSHIGIN(イブシギン)基本情報

| 住所 | 福島市飯坂町西堀切18 |
|---|---|
| 電話番号 | – |
| HP/SNS | |
| 開園時間 | ゲーミングスペース 13:00~20:00(土日祝のみ営業) ※日帰り入浴・宿泊、飲食は準備中 |
| 休日 | 月~金曜日 |
| 機器 | パソコン6台、仮想現実(VR)ゲーム機2台 |
| 料金 | プレー料金/1時間500円、3時間1,000円、フリータイム2,000円 ※プレーの際はご自身のアカウントでログインしてください。 |
| 駐車場 | あり |
| アクセス | 【電車】福島交通飯坂線「飯坂温泉駅」より徒歩約15分 【車】東北自動車道「福島飯坂IC」下車約10分 |
