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発達障がい・知的障がいの壁を取り払う魔法の言葉【心のバリアフリー おもてなし講座】レポートVol.3

困っている人がいるとき、私たちができること

福島市内の観光業者を対象に、バリアフリー対応を学ぶ『心のバリアフリーおもてなし講座』。
第3回目となる今回は「知的障がい・発達障がい疑似体験」を受講してきました。

知的障がいや発達障がいという単語は、子育てする中で頻繁に耳にする言葉。近年、医学の進歩によって認識が進んだと言われており、特に発達障がいに関しては過去20年で増加傾向にあるという統計が出ています(厚生労働省HPより)。

私たちにとって身近な存在になりつつあるこれらの障がい。心のバリアフリーおもてなし講座の中でも、非常に人気の高い講座です。

わが子を思い、結成した「もも組」。実体験を通して伝えたいこと

今回の講師は福島市で活躍する団体「もも組」。障がいのある当事者の保護者や支援者などがメンバーで、わが子を思って活動を始めた有志団体です。

写真提供:もも組

そもそも知的障がいや発達障がいとは?

知的障がいや発達障がいの原因は、先天的な脳機能の発達の遅れや偏りが原因であることがほとんど。肢体に障がいのある人々と同様に、生活の中で不便を感じることがあります。
この障がいは環境を調整し、それぞれの特性に合った学びの機会を用意することで軽減されるケースが多くみられます。

 

疑似体験

今回の疑似体験では「描いてみよう」「軍手でシール貼り」「聞き取れるかな」の3つのワークを行いました。

描いてみよう

「ぶどう」「きちんと」「コップ」「そこ(Where)」の4つの言葉を絵にします。ぶどうやコップはすぐに描けるけど、きちんとって何をきちんとする様子? そこってどう表現すればいい?

このワークでわかるのは、知的・発達障がい者にとって、あいまいな表現を理解するのは難しいということ。絵に描けないような表現というのがあいまいな表現に当たるそうです。確かに、わが家の子どもたちも幼児期には「それとって」と言ってもキョロキョロするばかりで、より具体的に説明しないと意味が通じなかったなと思い出しました。

軍手でシール貼り

こちらのワークは軍手をしたまま小さなシールを紙に貼っていく作業の体験です。これは見るからに難しそうです。作業に入る前に、もも組さんから前置きがありました。

「これから私たちはみなさんに嫌な言葉を話します。その環境の中でみなさんにシールを貼ってもらいます」

では、さっそく用意ドン! すると……

「早く! 早く!」「急いで~!」「きちんと貼りなさい」
「なんでこんなこともできないの~」

その言葉を聞いて、ギクッとする方も多いのではないでしょうか。子育てする中で頻繁に言ってしまいがちなワードです。

焦る気持ちの中でこのような難しい作業。当然うまくできずに、気持ちばかりが空回り。終わってからも「やっぱりできなかった」と諦めの気持ちがふつふつと湧いてきます。

次は、違った声掛けで仕切り直し。「もう一度やってみましょう」の掛け声とともに再度スタートすると……

「ゆっくりでいいよ」「上手だね~!」「焦らないで」「もう終わったの?」

というポジティブな言葉。

正直、全然違いました! 難しいけど応援がうれしくて頑張れちゃう!

このことからわかるのは、肯定的な言い方をすることによって「できるかも」「がんばろう」という気持ちにつながること。

理屈ではわかっていたけど、実際に自分が言われてみてしみじみ痛感しました。

焦る気持ちでシール貼りを行う参加者たち

聞き取れるかな

最後のワークは、もも組スタッフの4名が同時に話すのを聞き取れるのかという実践です。

もちろん、4人同時に話されたら誰が何を言っているのかわかりませんでした。知的・発達障がい者は、他の人の声が聞こえたり、エアコンの音がしたり、音楽がかかっていたりすると気になってしまい、必要な情報だけを聞き取ることができない(聴覚情報処理に問題がある)場合が多いそうです。
個別に話しかけたり、静かな場所で話したりするとストレスも少なく、コミュニケーションが取りやすいとのことでした。

心のバリアフリーを取り払うのは、たった一言の優しい言葉

今回は、知的・発達障がいがある人の感じ方や気持ちを疑似体験する講座でした。五感の感覚や言葉の理解はみんなが同じではなく、困った行動には理由も対処法も必ずあるということを、しっかり覚えておきたいです。

最後に、もも組さんは心のバリアフリー体験について、実際にあったエピソードを話してくれました。

ある障がい者がエレベーターでパニックになっていました。同じ空間には複数の見知らぬ同乗者が。すると誰かが突然、こう言ったそうです。

「大丈夫だよ」

途端にその場は(そうだよ!大丈夫だよ)(焦らないでいいよ)という雰囲気に変わったそうです。

これを聞いてみなさんは何を思いますか。おそらくほとんどの人は、その場に立ち会っても何も言えずに終わってしまうのではないでしょうか。

「突然のことにびっくりして何もできなかった」「どうしたらいいのかわからなかった」

もしかしたらそう思うかもしれません。

第1回目の講座レポでも書きましたが、障がいのある人は特別扱いされたいわけではなく、自分らしく楽しむこと、みんなと一緒に同じようにしたいと思っているだけです。
現在は、日本人の約3人に1人が高齢者や障がい者という時代。たった一言でパニック状態だった人が落ち着きを取り戻したり、家族が安心したりする可能性があるなら、思い切って声を出してみませんか?

心のバリアフリーは、周りの人がどんなことに困っているのか「知ること・気づくこと」が大事。無関心や他人事ではなく、気づいて声を掛けることが心のバリアフリーにつながります。

参加者からのコメント

「子どもに障害があり、もも組さんのお話を聞きたくて参加しました。
福島の人たちは優しいから、何かあってもいつも見て見ぬふりをしてくれます。でも本当は『できることはありますか?』『ゆっくりでいいですよ』と声を掛けてもらえると私たち家族はほっとします。実際に何もできないとしても、協力的な雰囲気があるといいなと思います。そのことを頭に置いていただけると、親としては大変ありがたいです」(福島市在住・Aさん)

疑似体験で行った「描く、貼る、聴く」の3つのワークを通して「とまどい」「不安」の一部を体験でき、興味深かったです。また「人はみな同じ、一人の人」「命の重さ、尊さは同じ」という言葉が印象的だった。(福島市在住・Bさん)

「知的障害のある人が社会生活をしていく上で一番必要なのは、周囲の適切なサポート。あたたかいまなざしで、ゆっくり丁寧にお願いします」ともも組のみなさん(左から齋藤さん、木曽さん、荒木さん、二瓶さん)

出前講座も開催します

今回の講座を主催した「ふくしまバリアフリーツリーセンター」センター長の佐藤由香利さんからもコメントが届いています。

「私たちは多くの方に、心のバリアフリーへの理解を深め、知識を得る機会が必要と考えています。障がい当事者など、困っている方も自ら『手を貸して欲しい』と言えて、そして手助けしてくれる優しい方が街中にあふれる福島市にしたいと思い、今後もこのような講座を継続して実践してまいります」

一般市民の方向けにも出前講座を行っていますので、ぜひ参加してみてはいかがでしょうか?

「心のバリアフリー出前講座」のご案内

心のバリアフリー冊子(PDF)

ふくしまバリアフリーツアーセンター基本情報

《一般の方向け》観光案内窓口

所在地:〒960-8031 福島県福島市栄町1-1 JR福島駅西口2階(福島市観光案内所内)
電話番号:024-531-6428 /FAX:024-531-8165
営業時間:9:00~18:00
E-mail:annai-ni@f-kankou.jp

《事業者様向け》出前講座等のご用命

所在地:〒960-8061 福島県福島市五月町10-17 酪農会館303  福島市観光コンベンション協会
電話番号:024-563-5554 / FAX:024-563-5915
営業時間:9:00~18:00 (土日祝定休)
E-mail:kankou@f-kankou.jp 

木俵麻樹子(きだわらまきこ)

レギュラーライター

木俵麻樹子(きだわらまきこ)

福島市出身。郡山市在住。出版社や企業の広報部などで経験を積み、結婚を機に夢だったフリーライターに転身。現在は、県内で販売している福島の情報誌や観光情報WEBマガジンなどにも執筆している。お店や宿の紹介から、住宅関係の記事までオールジャンルの記事に対応可能。パワフルな三兄弟の母として、ママ友もゆるっと募集中♪

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