MENU

旬のおすすめ

幼少時代から高校まで、3人の関係者に聞いた若隆景関の軌跡

わんぱく相撲〜学法福島時代のエピソード

若隆景

令和4年大相撲3月場所で見事な優勝を果たした福島市出身の関脇・若隆景関。自分よりはるかに大きい相手に果敢に挑み、技を駆使して勝利を勝ち取る姿に感動した方も多いのではないでしょうか。

そんな若隆景関は、ご存じの通り福島県福島市出身。いったいどんな少年時代を過ごしたのでしょうか。若隆景の幼少期~高校生時代をよく知る3人の方にお話を聞いてみました。

わんぱく相撲時代の「大波三兄弟」

若隆景関(大波渥=おおなみあつし)は、長兄の若隆元さん(大波渡=おおなみわたる)、次兄の若元春関(大波港=おおなみみなと)と一緒に福島市立吉井田小学校1年生の時に「わんぱく相撲教室」に入門しました。「わんぱく相撲教室」は、市役所に勤務しながら福島県チャンピオンとして国体に7回出場するなどアマチュア相撲力士として活躍した福島市の矢吹庄治さん(やぶきしょうじ・福島県県北相撲協会副会長)が中心となって、「日本の伝統文化を守る」という理念のもとに昭和57年に設立された子ども向けの相撲教室で、これまでにも複数の関取を生み出してきました。

若隆景関の子どものころについて、矢吹さんにお話を伺いました。

若隆景

小学校~中学校時代を指導した矢吹庄治さん

――小さいころ若隆景関はどんなお子さんだったのでしょうか。

お兄ちゃんの渡くん(若隆元さん)は子どものころから中肉中背で、港くん(若元春関)は身体が大きくて強くて目立っていたね。渥くん(若隆景関)は細くて小さくて目立たなかったよね。ただ、練習は黙々とやる子だったよ。相撲場(=福島市相撲場)での練習は「しこ」や「すり足」など基本的なことをやっていたんだけど、みんなが集まってくるまで「うさぎ跳び」を黙々とやっていたね。あれでだいぶ鍛えられたと思いますよ。

若隆景

若隆景が小学校~中学校時代に稽古をした福島市相撲場で開かれた大会の様子(提供:矢吹庄治さん)

――若隆景関といえば下半身が強いと言われていますが、原点はそこにあったのですね。

そう言ってもらえると嬉しいですね。相撲場での練習以外に、お父さん(元幕下・若信夫、ちゃんこ若葉山店主)の指導で相撲場近くの「桜づつみ(荒川桜づつみ公園)」で「うさぎ跳び」や「くま歩き」をよくしていましたね。「くま歩き」っていうのは、四つん這いになって熊みたいに歩く運動のことなんだけど、これで肩と腕、下半身が鍛えられたんでしょうね。相撲は、ひとつひとつの稽古の積み重ねが大切なんですが、そういう毎日の積み重ねが力となったんじゃないでしょうか。小学校6年生のころにはある程度大会で活躍できるようになりましたね。

若隆景

若隆景がうさぎ跳びなどをしていた荒川桜づつみ公園は、春は花見、秋は芋煮会、またジョギングや犬の散歩など市民の憩いの場として親しまれています。

――ご指導ではどんなことを心がけておられましたか?

相撲は「心技体」と言いますが、私が教えてきたのはまず「心」。心で負けては相撲になりませんが、相手がいるからこそできるのが相撲、1人ではできません。相手に対する感謝の気持ちを忘れず、「対戦が終わったら仲良く友達になりましょう」ということは今「わんぱく相撲教室」にいる子どもたちにも教えていることです。

若隆景

平成21年の福島市市民体育祭に出場した中学時代の若隆景関(左)提供:矢吹庄治さん

――なるほど、たしかに若隆景関は取組後に相手が土俵下に落ちないように支える姿をよく目にします。「技」という面ではどういうご指導をされていたのでしょうか。

「技」という面では、今若隆景の代名詞になっている「おっつけ」を徹底的に教えました。身体が小さいので「相手のふところに飛び込みなさい」ということを繰り返し指導しましたね。自分も身体が小さくて苦労したもんですから。
特に中学生になってから勝負に対する執念が人一倍強くなりましたね。信夫中学校に通っているときに渥くんと港くんが東北大会の団体戦でベスト12に入るほど強くなりました。でも中学の時は港くんには勝てませんでした。

若隆景

しこをふむ東洋大学時代の若隆景関(左)提供:矢吹庄治さん(郡山市相撲場にて撮影)

――今や全国的に有名な「大波三兄弟」ですが、当時はどんな兄弟でしたか?

渡くんはいわゆる「お兄ちゃん」。優しくて弟思い。港くんは、のんびりやで「のほほ~ん」としてました(笑)。渥くんはとにかく負けず嫌い。体重が60キロくらいの時に100キロくらいの大きい相手との対戦で倒されて、頭を打って脳震盪を起こしたことがありました。普通大きな子に身体を預けられたら逃げちゃう子が多いんだけど、渥くんは逃げなかったから倒されちゃった、それくらい負けず嫌いでした。ただ、お父さんの話だと渥くんはとても手先が器用で、実家のちゃんこ店の手伝いをよくしていたんだけど、渥くんの配膳はとても丁寧で綺麗だったそうです。「渥は器用で仕事がきれい」と何度も言っていましたね。

若隆景

東洋大学時代の若隆景関(提供:矢吹庄治さん、郡山市相撲場にて撮影)

ちなみに「わんぱく相撲教室」からは福島市出身の丹治大賀・純の二人の兄弟力士が大波三兄弟と同じ荒汐部屋に入門するなど、若隆景関の後に続く力士たちが頑張っています。

兄に一度も勝てなかった学法福島時代

次にお話を伺ったのは、学校法人松韻学園福島高等学校(以下、学法福島高校)に入学後に若隆景を指導した二瓶顕人(にへいあきひと)先生。自身も学法福島高校から駒澤大学相撲部に進み、卒業後に教師として母校に戻り国体などで活躍、相撲部の指導は15年になるという先生です。

若隆景

二瓶先生が持っているのは、インターハイに出場したときのパネル。若隆景関は後列右から二人目。

――若隆景関はどんな高校生でしたか?

「アッチ」、ああ、渥のことを「アッチ」と呼んでいるんですが、こんな小さなころ(二瓶先生の太もものあたり)から知っていて可愛い後輩です。 入学してきたときは本当に細くて、強くはありませんでした。体格で負けてしまうので。ただ、下半身の柔軟性が素晴らしくて、腰が低い状態で動くのが得意でしたね。そういう面では光って見えました。

――こちらではどのような練習をしていたのでしょうか。

相撲では練習を「稽古」といいますが、基本に忠実に、自分を追い込んでストイックに取り組むタイプでしたね。ほぼマンツーマンで毎日1~2時間、ぶつかり合いなどの稽古を続けてきました。絶対負けないぞという気合が入っていましたね。兄の港(若元春関)が1学年上にいたんですが、港は割とマイペース、なのに強い。渥とは違うタイプなので、よくぶつかり合ってました(笑)。でも渥は港の在学中は1度も勝てなかったんですよ。

若隆景

若隆景関が高校生の頃に稽古を重ねた土俵では、3人の部員が目標に向かって頑張っています。

――その頃の若隆景関から、今こうして幕内最高優勝をする姿を想像できましたか?

高校3年生の時で体重が90キロに満たなかったので、大相撲で優勝するとはさすがに想像していませんでした。当時から大相撲に進むことは考えていたようですが、高校卒業からすぐに入門するのではなく、大学に進むことを勧めました。やはりケガが心配でしたね。身体が小さかったので、大学で身体を大きくして技を磨いてから大相撲に行ったほうが良いと思ったんです。
まずは大関、そして横綱、十分期待できると思っています。稀勢の里が横綱になったのは30歳の時。渥はまだ27歳ですから、まだまだいけると思っています。

若隆景

優しい笑顔で稽古を見守る二瓶先生。部員への愛情が溢れています。

卒業生の大活躍に勇気をもらい、日々稽古に汗を流す学法福島相撲部員の皆さん。186㎝156kgと恵まれた身体を持つ部長の阿部佑磨(あべゆうま・2年生)くんは「若隆景関のような技能を身につけて、この身体を生かして頑張りたいと思います。今の目標はインターハイに出てよい成績をおさめること」と語ってくれました。

若隆景

二瓶先生とぶつかり稽古をする部長の阿部佑磨くん(左)

「太れない体質」をどう乗り越えたか

最後に、高校時代の先輩にもお話をお聞きしました。福島県県北相撲協会事務局の斉藤健(さいとうたけし)さん。現在は東邦銀行に勤務しながら総合運動部に所属して、国体に出場するなどアマチュア相撲で活躍しながら、母校の学法福島高校で後輩の指導もしています。

若隆景

冬場の寒い時期には使用しない福島市相撲場を稽古再開に向けて点検しに来た斉藤さん。

――若隆景関はどんな高校生でしたか?

自分は若隆景の兄、若隆元と仲が良くて、若隆景は可愛い弟という感じです。彼は要領が良いというか人あたりの良い子でした。ただ、稽古は熱心。若隆景の同級生にライバルがいたんですが、どうしても負けたくない一心だったんでしょう、よく稽古していました。そして勉強も一生懸命でしたね。
部活が終わると近くの商店とかコンビニに寄って、いろいろ食べたり飲んだりしましたね。紙パックの紅茶をよく飲んでいたような気がします(笑)

若隆景

斉藤さんと若隆景関の母校 学法福島高校。

――卒業してからはどんな交流があったのでしょうか。

若隆景が大学に入学してからも、国体の福島県代表選手として一緒に活動しました。一番思い出に残っているのは彼が大学4年生の時の岩手国体(2016年開催)です。決勝トーナメントで強豪の石川県と対戦して残念ながら彼は負けてしまったんですが、予選の時に大活躍してくれて、それがなかったら決勝トーナメントに進むこともできませんでした。この国体のことが一番の思い出です。

――若隆景関とはよく対戦されたのでしょうか。

実は自分は大学の4年間一度も彼に負けたことがなかったんですが、若隆景が大学3年生、自分が社会人1年目の時に初めて負けまして、ものすごくショックを受けたことを覚えています。
合宿とかでよく一緒になったんですが、彼は見ての通り太れない体質で、食も細かったです。相当頑張って今の身体を作ったんでしょう。相撲もスマートですが、お酒の飲み方もスマート。酔いつぶれたなんてことは一度も見たことありませんでした。

売り切れ続出、大人気若隆景グッズ

来場所の初日は5月8日。さらなる快進撃に期待がかかる若隆景関の関連グッズが欲しいという方も多いと思います。

福島駅西口コラッセふくしま1階の福島県観光物産館では、若隆景関のグッズの販売をしています。一番人気は名入りのタオル。入荷するとすぐに売り切れてしまうという人気商品です。次は4月20日頃に若干数入荷する予定だとか。他にも絵番付やバッヂ、のぼりなどがずらりと並んでいます。2021年8月にプライベートで来館した時のサイン入り錦絵(非売品)も必見。場所中でない時期にも若隆景グッズが手に入るのは福島県観光物産館だけとのこと。

ぜひ足を運んでみてください。

若隆景

入口の近くにある若隆景コーナー。国技館以外で若隆景グッズが買えるのはここだけです。

福島県観光物産館

所在地 福島市三河南町1番20号 コラッセふくしま1階
問い合わせ TEL.024-525-4031
営業時間 9:30~19:00
定休日 元旦・勤労感謝の日(点検のため)

◎関連記事
【祝 優勝!】若隆景関のご実家・福島市「ちゃんこ若葉山」に行ってきました!

福島市の魅力満載! 人気記事ランキング

みんなに人気の福島市情報! コンテンツ別 人気ランキング

観光・スポット

体験・ツアー

グルメ・お土産

温泉・宿泊

福島市の特産品! ふるさと納税をご紹介