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「移住前は、周りに受け入れてもらえるかどうかが一番心配でした」〜福島市移住者インタビューVol.2 菊地俊作さん・由美さん

埼玉県から移住、この秋念願の農業経営をスタートする40代ご夫婦

福島市の名産といえば桃を始めとする多種多様な果物。果物は福島市の農業産出額(174.1億円)の約6割を占める重要な作物です。 特に「もも」「日本なし」は、いずれも全国2位の産出額を誇っています(※)。その大事な産業を支えるのは、日々美味しい果物作りに励む農家の皆さんですが、高齢化と後継者不足が長年の課題となっています。一方で、自然と向き合い作物を育てるこの仕事に魅力を感じ、新たに就農を志す方もいます。(※)数字はすべて平成30年分のデータ

福島市移住者インタビュー第二回は、埼玉県桶川市から移住した菊地俊作さん(45才)由美さん(44才)ご夫妻。農業高校の教員をしていた俊作さんですが、教えるのではなく自ら農業に就きたいと移住を決意、現在は飯坂町東湯野で果樹農家を営む伊藤隆徳さんの指導のもと、夫婦で農業見習いをしながら開業準備をされています。作業の合間の菊地さんご夫婦をお訪ねし、お話を伺いました。(聞き手・文  熊坂仁美   / 福島市観光ノート編集長)

今回、菊地さんご夫婦のメンター役となった「株式会社フルーツファームいとう園」 伊藤隆徳さんを囲んで。

美しい山々を見渡しながら農作業する毎日

熊坂:お二人は移住されてまだ1ヶ月ということですが、新しい生活はいかがですか。

菊地俊作さん(以下、俊作さん):移住前に何度かこちらに来て、いい場所だということはわかっていたのですが、実際に畑で仕事してみると、遠くに安達太良山や雪をかぶった吾妻山、新幹線が通るのも見えてとても眺めがいいんです。こんな風景を見ながら作業できるって本当にありがたいなあと。

菊地由美さん(以下、由美さん):おかげさまで本当に気持ちよく作業させていただいています。

「このあたりは緩斜面で地形もいいし、最初に来た時からいい場所だなあと思っていました」と俊作さん。 

コロナで時間の余裕が生まれ、就農・移住に一歩踏み出す

熊坂:俊作さんは農業高校の先生をされていたということで、農業の専門知識をすでにお持ちだったのですね。

俊作さん:いえ、そんなことは全然なくて。たしかに大学(東京農業大学)では農業を学びましたし、農業高校の教員も16年やりましたが、教えていたのはバイオテクノロジーでしたし、農業を実践する技術レベルにはなくて、いま本当に「1年生」なんです。

由美さん:まったくの普通の人です(笑)。

熊坂:そうなんですね。では今回、移住して農業をはじめるきっかけは何だったのですか。

俊作さん:僕は基本的に農業が好きで、農業をしたいとずっと思っていました。就農者がどんどん少なくなる中、教員として「農業は大事だ」と常日頃生徒に言っているうちに、それなら自分がやるべきじゃないかなと思うようになって。

熊坂:有言実行ということですね。

俊作さん:そうですね。生徒に言うなら自分でやってみようと。でも教員の仕事は忙しくて、ずっと学校に入り浸りの毎日だったんです。授業のほかに週末は部活(バトミントン部)の担当でしたから、休みはほんとになくて。何か行動を起こす余裕もありませんでした。でも昨年コロナがあって、土日が休める状況になったんです。

熊坂:やはりコロナがきっかけですか。

俊作さん:はい。コロナで土日が休めるようになって、時間ができたのがきっかけです。それで、ずっと興味があった農業や移住について調べてみようということになりました。

熊坂:具体的にどんなアクションを起こしたのですか。

俊作さん:「就農フェア」(農業に関心がある人向けの相談会)に行ったりしました。ようやく一歩踏み込めたんですが、もう踏み込んだら最後ですね(笑)。

熊坂:移住したい場所は決まっていたのですか。

俊作さん:なんとなくですが、長野か福島がいいかな、とは思っていました。気候的に暑すぎず、寒すぎずでいいかなと。

熊坂:両方とも果物の産地ですね。最初から果樹に決めていたのですか。

俊作さん:いえ、そういうわけではなく、漠然と農業をやりたいという感じでした。福島で果樹をやるきっかけになったのは、実は林業だったんです。

熊坂:え、林業!?

人とのご縁がつながり福島へ

俊作さん:3年前に高校の長期研修で農業現場をまわるプログラムがあったのですが、大学が林学科だったので林業研修を探したら、そのときに受け入れがあったのが福島だったんです。

熊坂:それで福島につながるんですね。

俊作さん:冬の福島で3週間ほど過ごしました。その林業研修でお世話になったMさん(福島市在住)がとても面倒見のいい方で、研修のあとも何かと声をかけてくれていました。Mさんに相談すると、それは農家の人に直接話を聞いた方がいいと、すぐにセッティングしてくれて。

由美さん:ほんとにすぐに動いていただきました。

熊坂:そこで果樹に結びついたのですね。

俊作さん:はい。去年の9月に福島周辺の農家さんをご紹介していただいてお話を聞きました。そのうちのお一人がいまお世話になっている伊藤隆徳さんです。

熊坂:わあ、そうやってご縁ってつながっていくんですね。伊藤さんとはそのときどんなお話をされたのですか。

俊作さん:一通り果樹農家の仕事のお話を伺いました。果樹大変だよ、とネガティブな面も言っていただきました。「農業やるには農地が必要だから探さないといけないけど、でも一生懸命やっていればそのうち出てくるよ」とも言われて。

由美:伊藤さんが農家民泊をされているということで「まずはうちで農家体験をやってみたら」と言われて、次の月にはまた来てました(笑)

熊坂:行動が早いですね!

入り口にあるお洒落な看板。「ファームステイ(農家民泊)」の看板も掲げられている。

俊作さん:休みをとって、夫婦で1泊2日の農家体験をしました。薪ストーブでそば粉ピザを焼いていただいたのですが、これが美味しくて。

熊坂:聞いただけで美味しそうです。

由美さん:伊藤さんには「あえて厳しい話もしますが」と、良いことだけでなく、現実的な厳しいことも言われました。 

熊坂:一番厳しいと思ったのはどんなことでしたか。

由美さん:年に1回しか収穫の時期がないし、新規ではじめるとお金もかかる。しかも食べられるようになるのはずっと先、1年2年ではものにならず5年はかかると。食べていくための農業と趣味の農業とは全然違うと言われました。

俊作さん:当然ハードワークですし。それはわかっていましたが、農業教員といいながらもサラリーマン家庭に育ってますので、本当に自分たちではできるかどうか。もうちょっと自分たちでも調べてみようと思いました。

由美さん:私はそのときまだ移住は完全に賛成をしてなくて、まずは私を説得してくださいね、という感じで。

熊坂:先生としての安定した生活を辞めてということですから、奥様としては当然不安ですよね。

由美さん:はい。生業としての農業がちょっと想像がつかなくて。まずはどんなものか、そして自分にできるかどうかやってみないとわからなかったので、11月に私だけ、23日で再びこちらに農業体験に来ました。

熊坂:また翌月にいらしたんですね!

由美さん:はい。りんごの収穫のお手伝いをしました。教えていただいた通りに真剣に作業をしました。忙しい時期でしたが皆さんによくしていただいて、いろんな意味で距離が近づいたのを感じました。

昨年秋、不安を抱えながら一人でりんごの収穫を手伝った由美さん。季節は変わり、この日は新しく芽吹いたりんごの摘蕾作業を夫婦で行っていた。

熊坂:そこでやっと決心されたのですね。

由美さん:はい。

俊作さん:実は僕は10月の時点でもう心の中では決めていて、退職願も出す必要があったので12月には提出していました。年度が変わる3月31日付で学校を辞めて、その2週間後に福島に引っ越ししました。

移住前に一番恐れていたリスクとは

熊坂:様々なリスクがある中で就農、移住をされたわけですが、実際にこちらに来てみていかがですか。

俊作さん:リスクはいろいろありましたが、まわりの皆さんのおかげでひとつひとつ解決している感じなんです。まず、週2回、高校の非常勤講師の仕事をいただきました。これで全く無収入ではなくなったのでとても気が楽になりました。残りの4日は畑で作業しながら農業を学んでいます。

熊坂:それはよかったですね。先生の仕事なら俊作さんのこれまでのキャリアをそのまま活かせますしね。

俊作さん:そうなんです。さらに、伊藤さんのご紹介で農地を約50a3人の方から借りられる予定で、秋には桃とブドウの苗木を植えます。もう感謝しかないです。

熊坂:わあ、よかったですね。今は県も市も、就農者への支援制度に力を入れていますね。福島市には「あぐりっしゅサポートパッケージ」というワンストップの総合支援制度があるそうですよ。

俊作さん:思った以上に農機具が高かったり、出費も多いので、そういう支援をいろいろ組み合わせながらうまく使っていこうと思います。

由美さん:いま住んでいるところも補助制度を使っていて、家賃が割安なんですよ。

熊坂:場所はどちらですか。

由美さん:蓬莱団地(福島市南部のニュータウン)の一室で、福島県の移住者向け支援事業の枠を利用させていただています。1年間の期限つきですが、今は収入がほとんどないので、とても助かってます。

熊坂:住み心地はいかがですか。

由美さん:きれいにリフォームされていて住みやすいです。そして福島の人って本当にみんな親切ですよね。先日の地震のときも、近所の方がすぐに訪ねてきてくれて「大丈夫だった?揺れたけど」と声をかけてくれました。

俊作さん:埼玉ではそんなこと、あまりないです。福島の人は本当にみな優しいです。

熊坂:うれしいです。そこは福島の良いところで、ほかの移住者の方も同じことをおっしゃっています。

俊作さん:実は僕たちが心配していた移住の一番のリスクは「まわりに受け入れてもらえるか」ということでした。他県の話ですが、同じく農業の移住者で、周囲に声をかけてもらえるまでに時間かかったという話を聞いていたので。でも福島は全くそんなことがなく受け入れてもらっています。

「午後はあっちの畑で作業すっかんない(作業しますよ)」と二人に声をかける伊藤さん。

「湯めぐりパスポート」で福島を知る

熊坂:福島ではどんな所に行きましたか。

俊作さん:復興道路(令和3年に開通した相馬福島道路)を通って相馬に行ったり、フルーツラインを車で走ったり。

由美さん:市内をめぐったり、ぶらぶらしている感じです(笑)

熊坂:「湯めぐりパスポート(条件を満たした福島市新規移住者に配られる三温泉地フリーパス)」はお使いになりましたか。

俊作さん:すでに全制覇しました(笑)。

熊坂:活用されてますね!どこがお気に入りですか?

由美さん:鯖湖湯、波来湯、あったか湯、中之湯、それぞれ特徴があって良いですが、私は土湯温泉の「中之湯」が印象的です。建物が新しくてキレイで。

熊坂:中之湯は湯めぐりパスポートで使える施設の中で確か一番高くて、500円なんです。お二人だと1,000円ですよね。それが何度行っても無料というのはうらやましいです。

俊作さん:中之湯は僕たちが第一号だったみたいで、「湯めぐりパスポート、話は伺っていたけど、実際に移住者の方に使ってもらえてうれしいです」と受付の方に言われました。

由美さん:私達は引っ越してきたばかりで、福島のことはまだ全然知らないのですが、温泉めぐりを通して、家と職場以外の場所を知ることが出来るからありがたいです。

熊坂:なるほど、3ヶ所それぞれ別々の場所にあるので福島を知るきっかけになりますね。

土湯温泉中ほどにある公衆浴場「中の湯」。共同風呂のほか貸切風呂が3室ある。受付時間 9:00~21:00 定休日 毎週火曜日 大人 500円(子ども 250円)TEL:024-563-3991

熊坂:これからの目標はありますか。

俊作さん:まだ始めた段階なので、なんとも言えないのですが、まずは自分たちが作って人様に食べてもらえる作物を作るというのが目標です。早く「農家」と名乗れるようになりたいです。

由美さん:ご縁とタイミングに恵まれてとても感謝しています。作業には大変なこともあるし、始めたばかりでうまくいかないことも多いですが、農業の厳しさを感じながらも楽しむようにしています。皆さんに本当によくしていただけるので、これからも夫婦で頑張ってやっていこうと思います。

熊坂:とてもいいお話ありがとうございました。菊地さんの果物ができるのを今から楽しみしています。

<移住者インタビューその他の記事>
「移住したことに一番驚いているのは、私自身なんです」〜福島市移住者インタビューVol.1  森礼子さん

「お金より自由な時間がある方が僕は嬉しいんです」〜福島市移住者インタビューVol.3 遠藤優太さん

 

-株式会社フルーツファームいとう園 
http://www.f-itoen.com/

– 福島市移住支援サイト「ふくがましまし ふくしまし」
https://www.city.fukushima.fukushima.jp/ijyuu/

-福島市の移住・定住支援
https://www.city.fukushima.fukushima.jp/kurashi/teijyu/index.html

-福島市就農支援「あぐりっしゅサポートパッケージ」
https://www.city.fukushima.fukushima.jp/nougyou-n/nougyousyou/kakudaisuishinn.html

-「移住者必見!湯めぐりパスポート
https://www.city.fukushima.fukushima.jp/tkoryu-deai/kurashi/ijyuuteijyuu/onsenpass.html

 

熊坂仁美

編集長

熊坂仁美

福島市出身。慶應義塾大学文学部卒。専業主婦として2児を育てたあと2005年にITライターとして活動を開始。2010年、日本初のFacebookビジネス書『Facebookをビジネスに使う本』(ダイヤモンド社)を上梓。2013年に母の介護のためUターン。2018年よりデジタルマーケティングアドバイザーとして「福島市観光ノート」立ち上げに加わり、2020年、編集長に就任。ヤフーニュース個人オーサ—。

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